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【セミナーレポート】 「小1の壁」解消に、企業とNPOができることは?

5月に「小1の壁」について考えるオンラインセミナーを開催しました。そのダイジェストレポートをお伝えします。
早速ですが、皆さん、「小1の壁」という言葉をご存じでしょうか?

◎小1の壁って?
「小1の壁」は子どもが小学校入学するタイミングに、就労家庭が子どもの預け先に困り、子育てと仕事の両立が難しくなることを指します。保育園では、延長保育があるところも多いですが、放課後児童クラブ(学童保育)では18時や19時で終わる場合があります。そうなると、子どもは、家で保護者の帰りを待つことになりますが、小学1年生の一人で留守番は、まだまだ安全面でも精神面でも心配なものです。また、子どもが小学生になるタイミングで時短勤務制度が終了する企業も多く、子どもの小学校入学を機に、本当は続けたかったけれど、非正規雇用に切り替えたり、仕事を辞めたりと、働き方の変更を迫られるケースがあるのも実状です。

◎「#学童落ちた」がトレンドワードに~いま、「小1の壁」がますます高い壁になっています~
厚生労働省の調査では、昨年5月1日時点で、学童への入所を希望しても断られた児童は1万5180人と、前年と比べ1764人増えました。また、この春は学童保育に申し込んでも利用が断られるケースが相次ぎ、公立の学童保育の多くで結果が出る2月頃から、ソーシャルメディア上に「#学童落ちた」ということばが並んで、「小1の壁」で悩む保護者の声を多くのメディアが取り上げました。預けられる時間が少なくなるだけでなく、預かりそのものもなくなると、就労が難しくなり、「小1の壁」がまずます高い障壁になっています。

◎企業と私たちで、何かできない?!まずはオンラインセミナーを開催しました!
このような社会の動きから、企業の方からも、「小1の壁」を企業としてどう考えていけばいいの?といったお声をいただき、まずはこの春に起きた状況をお伝えするオンラインセミナー「~#保育園落ちたが#学童落ちたに~ 今こそ企業が知るべき『小1の壁』」を開催しました。

1時間目:「小1の壁」を知る
2時間目:企業の皆様に知ってほしい放課後の現状
3時間目:乗り越えるために~「子育てと仕事」の両立に何が必要か?~

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▼当日のダイジェストムービーはこちら▼

1時間目:「小1の壁」を知る
◎「小1の壁」を知るキーワードは、「学校」「放課後」「職場」

スピーカーは平岩さん。「『小1の壁』を考えるうえでポイントになるのは、『学校』、『放課後』、『職場』です。この3つが、仕事と家庭の両立に、大きく関わってくることが私たちの調査で明らかになりました。今回はそのなかの『放課後』と『職場』をキーワードに考えていきたいと思います。」と、この日のスピーカーである放課後NPOアフタースクールの代表理事・平岩さんは話し始めました。

◎あるご家庭の「小1の壁」~今年4月、我が家はこうでした~
続けて平岩さんは、「セミナーにあたり、何人かの小1の働くお母さまにお話を聞きまして、このケースが最も壮絶だったので紹介します。」と、あるお母さまの今年4月のスケジュールを紹介しました。このご家庭は、お子さんが小学校入学し、学童保育に通いだしたそうです。学童初日、お子さんは楽しそうな様子だったとのこと。しかし、次週から「人が多くって疲れちゃった」とお子さんがぼやくようになりました。重なるときは重なるもので、4月中旬にお子さんが発熱でダウン。時期を同じくして、ご実家のお父様ががんの手術で入院。その後、パートナーの方も発熱でダウン。家族の体調が回復してきた4月17日にお子さんから、「(学童)無理していかなくてもいい?」と言われたそうです。保護者会やPTA総会が平日昼間にあっても、先週の仕事のツケが回っていて欠席。その後パートナーが1週間海外出張でワンオペだった際、とうとうストレスと相まって、子どもたちを叱ってしまったそうです。

― 平岩さん 「もちろん、これは一例に過ぎず、置かれている状況は個人差があります。ただ、多かれ少なかれ、『小1の壁』を感じている就労家庭は多いのではないでしょうか。」

◎子育てと仕事の両立の悩み~アンケート調査結果から~
放課後NPOアフタースクールでは今年2月、小学校1年生〜6年生の子どもがいる働く女性(埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県)1,000人を対象にした「小1の壁」のアンケート調査を実施しました。

▼▼アンケート詳細はコチラ▼▼
https://npoafterschool.org/wp-content/uploads/2023/03/952d224617fa31b87ed6621f8d8654e0.pdf

 

-平岩さん 「まず、働きながら子育ては大変ですか?と聞くと、当然といえますが、84.7%の方が『はい』と回答されました。なぜ働きますかと改めて聞きますと、当然といえますが「会計のため」が87.8%となりました。女性が働いていると『自己実現をしているのだから、多少の苦労はしょうがない』といったことをおっしゃる方もいますが、とんでもない。皆さん当然働く権利があるし、ましてや家計の為にみんな働いているのだという基本的事実を確認できました。」

「そして、子どもの小学校入学にあたって働き方の見直しを検討したという方が、過半数に及びました。実際に働き方を変えた方の理由を聞いたところ、上位2つは、当たり前と言えば当たり前なのですが、子どものことがきっかけで、小学生のタイミングで結構多くの方が働き方を考え直すという事実があります。以前は保育園の時点でしたが、保育園の問題が解消できてきておりますので、保育園の時点では諦めないけれども、小学校の時点で諦める人がいるのではないかと思います。」

「子どもの小学校入学で子育てに関する負担や悩みが増えたか聞いたところ約6割の方がそうだとお答えになり、内訳としては、子どもの勉強サポートや夏休みなどの子どもの世話といった、保育園時代には少なかった悩みが上位に入りました。また、先ほどの事例にもありましたように、負担が増えたことで、イライラしたり、自分が体調不良になったり、夫婦喧嘩があったりといったことも起きていきます。ちなみに、親のイライラ・ストレスはそのまま子どもたちにうつると考えたほうがいいと思います。子どもが一番いやなことは、親のイライラ・ストレスで、その状況が子どもにうつって、学校や学童でイライラ・ストレスを発散するといったことも起きてしまいますので、見逃してはいけないポイントだと思っています。今までの説明で、なかなか大変な状況というのは皆様ご理解いただけたのではないかと思います。」

2時間目:企業の皆さまに知ってほしい放課後の現状

◎放課後の現状
2時間目は、企業の皆様に知っておいていただきたい放課後の現状についてです。小学校低学年の放課後・長期休みの時間は約1,600時間/年と、学校で過ごす1,200時間/年より長いと言われています。*小学校低学年における放課後の時間および長期休暇の合計(2016年 全国学童保育連絡協議会調べ) 放課後の時間はこのように長く、楽しい時間であるはずなのですが、現在は子どもの犯罪の多くが14-18時に起きているという事実があり、なんとなく放課後は危ないという感覚がいまの保護者にはあると言えます。また、20年間で学童保育の利用者数は3.5倍増加し、現在では年間約130万人が利用しています。

そしてこのグラフは、保育園と学童保育の待機児童数を示したものです。

-平岩さん 「『学童にも待機児童がいるんだ』、と驚かれた方もいらっしゃるかもしれませんが、2019年に保育園の待機児童数を超えており、待機児童の問題はいわば、保育園から学童保育へ移っていると言えます。また、そもそも諦めて申請をしないケースや、小学生なので家で留守番をしたり、習い事を繋いだりしてしのぐケースもあります。良い学童保育があればぜひ利用したいと考えている潜在的な待機児童数はさらに飛躍的に数が増え、30万人、40万人、いやいやそれ以上、と言われることがあります。いずれにしても学童保育が足りていない状況であり、課題は大きくなり続けています。」

「他にもあります、放課後の悩み。習い事の送迎をしている方が6割以上いらっしゃいます。この習い事の送迎がしたくて、仕事を辞めたり、パートに変えたりという話も私の周りではよく聞きます。また、保護者の年収によって習い事などの体験活動の差に大きな影響が出ていて、経済格差が子どもの体験格差につながっているといえます。」

◎学童は2月に落ちる、留守番のお願いをする自治体も

-平岩さん 「皆さん、学童って2月に落ちるって知っていましたか?2月に落ちたら困りますよね。ある自治体では、1年生を今年は受け入れたいので、2年生になったら学童を利用しないよう、留守番の練習をしてもらいたいと依頼したということがニュースで報じられました。2015年4月の児童福祉法改正により、学童保育は6年生までに拡大となっているのに、事実上小3までという現状。場合によっては『小2の壁』、『小3の壁』と、『小1の壁』がずっと続くという状況が起きてきているということです。」

そして今春、「#学童落ちた」がSNS上で見られるとともに、メディアも「小1の壁」を取り上げ、そして国会で岸田首相も「小1の壁」を喫緊の課題と言及しました。

-平岩さん 「放課後について言えることは、時間が学校の時間よりも長いということ、また、量が足りない、私の周りでは、先ほどの事例にあったように、行き渋りがちょっと増えているなという感覚です。習い事で繋ぐというケースもありますが、様々に課題が山積しています。昔は、『小学生になったらもう安心ねー』と言われていたと思いますが、現代はそうではないです。この一言だけは『小1の壁』で困っている保護者の方には言わないであげてほしいとおもいます。」

◎職場について言えること

3つの目の要因だった、「職場」のほうに話は移りました。リモートワークが進んだ印象がありますが、本格的に浸透したとはいえず、地域格差もあるというのが現状ではないでしょうか。また、短時間勤務制度は65%強の企業が小学校入学前に短時間勤務制度が終了してしまいます。

-平岩さん「職場について言えることは、子どもの小学校入学を機に、正社員離脱が発生するリスクがあることをぜひ知っていただきたいです。私の感覚でいうと、このタイミングでパートに切り替えた方は結構いらっしゃいます。子どもが中学3年生を卒業するタイミングで正社員転職を考えるけれども、50歳を超えるタイミングとなり、なかなか正社員になれないという方もいらっしゃいました。もし正社員で頑張りたい方がいらっしゃるのであれば、その方々に対して、柔軟な働き方や短時間勤務を延ばすという働き方制度の見直しを検討いただけるとありがたいなと思いました。」

3時間目:乗り越えるために~「子育てと仕事」の両立に何が必要か?~

-平岩さん 「さきほど紹介したアンケート調査のなかで、我々もいろいろと予想をして作ったのですが、意外といえば意外だったのは、子育てと仕事の両立に必要なことは、『理解』ということで、まずは理解が必要なのだねということが見えてきました。」

「まずは理解が大事なんだということで、パートナーの皆様、職場の皆様、小学生あるいはこれから小学生のお子さまを育てている方が周りにいらっしゃったら、どうも大変らしいねということを理解してあげるだけで、ずいぶん助かるのではないかと思います。とくに4月は忙しいです。4月にいろんなことが集中してきます。保護者会、PTA総会、慣れない学童、仕事も年度始めで大変という方もいらっしゃると思います。まずは4月は大変なんだということを理解してあげてほしいと思います。4月はゆっくりペースでいいよ、5月以降に頑張ればいいよねと言っていただけるだけで全然違います。保育園以降も大変だということをご理解いただけるだけで、当事者は気持ちが楽になります。ぜひぜひご理解のほど、よろしくお願いいたします。」

参加くださった皆様からのコメント

参加してくださった皆様からはアンケートでこのようなあたたかいコメントをいただきました。改善すべき点も多くあったかと思いますが、皆様、本当にありがとうございます!

  • とにかく心に刺さりました。
  • 子どもたちの放課後を「楽しくわくわくするもの」にすべく、真正面から取り組まれている様子が伝わり、感激しました。自分にも何かできることはないかと考えています。
  • リサーチやヒアリングに基づいたお話は、大変参考になりました。同僚や友人達から仕事と育児の両立の大変さについて話を聞きますが、それはまさに氷山の一角であり、想像を絶するとつくづく思いました。
  • 周囲の理解の必要性、重要性を肝に銘じて、仕事に取り組みたいです。

Next Actionへ!私たちと「小1の壁」解消のために活動をともにしませんか?

「小1の壁」オンラインセミナーのダイジェスト、いかがでしたでしょうか?
放課後NPOアフタースクールには「ソーシャル・デザインチーム」があり、企業の方と協働して、社会課題解決の一助となる活動を目指しています。そして、「小1の壁」を企業の方とともに解消していく糸口を今後も検討していきたいと思っています。
企業として、「小1の壁」解消に何かできないかな?と思われる方は、ぜひ気軽にソーシャル・デザインチームにご連絡いただければ嬉しいです!!

▼▼ソーシャル・デザインチームについて▼
https://npoafterschool.org/social-design/

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