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「"子ども視点"で居場所をつくる〜私たちが向き合う声と権利〜」|第10回 こどもまんなか!放課後勉強会

放課後NPOアフタースクールでは、放課後の居場所運営に関わる方や、子どもの居場所づくりに関心のある方を対象に、オンラインで「放課後勉強会」を開催しています。

第10回目の節目となる今回は、これまで参加者の皆さまから寄せられた「子どもの声をどう聴き、どう関わればよいのか」「子ども視点の場づくりの取り組みを知りたい」といった声を受け、「子どもの声と権利」をテーマに実施しました。
第1回放課後勉強会の登壇者でもある、きしもとたかひろ氏に再度ご登壇いただき、現場での実践事例を交えながら、子どもへの関わりについて参加者と一緒に考える時間となりました。

今回は、全国各地から総勢1,200名以上の方々にお申し込みをいただきました!また、130か所以上でサテライトでのご視聴もいただきました。「子どもの権利」という難しいテーマでしたが、居場所運営者や自治体の皆様、保護者の皆様からの関心の高さが表れていると感じました。

▼第10回目のご案内情報はこちら
https://npoafterschool.org/archives/news/2025/09/46742/


【放課後勉強会ダイジェスト】
■基調講演|「“子ども視点”で紐解く子どもの権利と声への向き合い方」
「子どもの声を聴く」とはどのようなことなのか、きしもと氏のイラストを交えたお話のなかで、考え方の土台となる部分を紐解く時間となりました。

―なぜ、子どもの意見を聞くのか?

「それを考えようとしたときに、“放課後の居場所を充実させるための方法”と、大人を主体として考えていないでしょうか。それは【大人に矢印が向いている】ということです。」と、きしもと氏は語り始めました。
子どもたちの意見を聞く理由はとてもシンプルで、「子どもたちの居場所は“子どもたちのための居場所”であり、どんな居場所にするかは子どもたちの“こうしたい”によってつくっていくもの」だということでした。

とはいえ、どこまで意見を聞いたらいいのか悩ましい部分もあると思います。きしもと氏は、子どもの権利条約に基づいて「子どもの権利とは何か?」をわかりやすく話してくださいました。

なかでも、リアルタイムでの参加者から反響が大きかったのが、「子どもの権利」の考え方です。

きしもと氏によると、子どもを「保護の対象」「大人から権利を与えられる存在」として捉えるのではなく、子どもを主体として考えることが重要である、ということでした。権利の主体はあくまでも子ども自身で、様々な権利のなかの一つに「意見の尊重」があり、意見の尊重はそもそも子どもが持っている権利である、という考え方です。

その前提があることで「意見を聞かなければならない」ではなく、「意見を聞くものである」という見方に変わり、大人はそれを見守る存在になっていく、ということでした。


■メインパート|“子ども視点”を現場に取り入れるための事例提供、取組共有
事例|『日常に寄り添った子どもへの関わり』
基調講演の流れで、きしもと氏に進行をお任せしながらメインパートである事例や取り組みの共有が始まりました。

山形県・鶴岡市社会福祉協議会第二学区学童保育所より、佐藤さん・斎藤さんにご登場いただき、日々の取り組みを共有いただきました。第二学区学童保育所は、「子どもたちが自分のやりたい・やってみたいという気持ちをしっかり受け止め、その思いを伸ばして自由に表現できる環境づくり」を大切にされており、登録児童数110名、職員が9名の拠点です。

・子ども自身が自分で考え、工夫する過程が大切
釣竿を作りたいという男の子がいて、「作って!」と職員に頼ろうとしていたが、ここはチャンス!と思い自分で考えてみる方法を手助けした、というエピソードを語ってくださった佐藤さん。

子どもに対しては「失敗してもいいんだよ」と背中を押すことが重要であり、大人は必要な時に手を添える存在になることを心掛けているという斎藤さん。

子どもたちには、できるという経験や、できないなかでの工夫・もどかしさを感じながら試行錯誤する過程が大切だと感じているそうです。

・職員の意識を変える
そのような環境の中で、居場所拠点のハード面である保育室についても、思い切って仕切りを取り外し、子どもたちがのびのび過ごせるように内装を大改造したこともあるといいます。思い切って改造をする段階で職員から若干の反発はありつつも、「やってみてダメだったら考えよう!」というスタンスで積み重ねていったということでした。

学童内部の改革にあたって職員同士での話し合いを重視しながらも、最初は自分たちの思いが強くなかなかうまくいかないこともあったそうです。それを粘り強い対話や内部研修などを通して、職員同士で向かっている目線を合わせながらチューニングをしていったということでした。

・子どもに合わせた配置で関係性も変化!
職員の配置でも変化があったそうです。配置の予定をしっかり決め切って子どもたちを「監視する」のではなく、安全は確保しながら「支援する」という考えにシフトして、子どもたちの動きに合わせた配置に変更しました。その結果、「子どもたちに合わせて職員が動く」という考え方になり、職員自身の行動も変容していったといいます。

子どもたちの意見を聞くようになってから、子どもたちのワガママは減っていき、むしろ子どもたち自身が意見を言える環境になったことで、“ワガママ”が“交渉力”に変化し、子どもたちと職員の関係性も良くなったということでした。

きしもと氏もこれらの考え方や取り組みに対して大変共感されており、リアルタイム参加の皆様からもとても多くの共感をいただきました。

事例|拠点・組織でビジョンや方針を共有・推進するための取組 日常に寄り添った子どもへの関わり
続いて、当団体マネジャーの小林より、「チームやスタッフ間で意識を合わせる取り組み」の事例共有をいたしました。

現場責任者として、「子どもが自分らしく過ごせる居場所」をつくるために、スタッフの意識を揃える難しさに向き合ってきました。大人が“正解”を押しつけるのではなく、なぜそう思うのかという背景を丁寧に聞き合い、安全と挑戦のバランスを一緒に探ることが重要だと気づきました。

スタッフ個人への対話と、チーム全体で思いや判断軸を共有する場づくりを通じて、スタッフ自身が子どもの声を拾い、納得して関われる関係が生まれていく。その積み重ねこそが「子ども主体の現場」を育てるのだと伝えました。


■よくあるお悩みQ&A、質疑応答
参加者の皆様からいただいた様々な「お悩み・質問」の中から、勉強会で実際に取り上げた「改善のヒントとなる事例やアドバイス」をご紹介いたします。

お悩み・質問|「“宿題を学童で終わらせてほしい”という保護者の声がある。
これに対してどのように対応・工夫ができるか?」
回答小林(放課後NPOアフタースクールスタッフ)
・保護者の気持ちを考えると終わらせてほしいという気持ちは理解できるが、子どもがどの時間に宿題をするかを決めるというのはとても大事なこと。
・「学童でやらなくていい」とは思っていないが、翌日までのどのタイミングで宿題をするかも子どもの自由なのではないかと考えている。
コメント|きしもと氏
・宿題については学童でやるのがよいか、自宅でやるのがよいか、「その子にとって一番しんどくない方法」を一緒に考えていくべき。
・保護者とも、できる日もあればできない日もあることを前提に話をしていくことで、「いつかできるようになる日がきっとくる」と感じてもらえるのではないか。

■クロージング|「子どもたちのエピソード」
最後に当団体の渡部より、事前アンケートでお寄せいただいた中から子どもたちエピソードをご紹介しました。

あまり本を読まなかった子に「どんな本なら読みたい?」と聞き、好みに合う本をそっと用意すると読書が楽しくなり、やがて自分から本棚まで管理してくれるようになったというエピソード。子どもの成長を感じます。

別のエピソードでは、クリスマス工作から距離を置いていた子が、ある瞬間に「サンタのあれどこ?」と自ら動きだして、自分の家族への特別な願いを込めて静かに作品を作っていたというものもありました。子どものペースを尊重したときに見えてくる“その子自身の物語”が、あたたかく胸に残るエピソードでした。

あっという間の2時間でしたが、活動のヒントがたくさん詰まった実り多い時間になったかと思います。
参加後アンケートでは180件以上の回答をいただき、満足度は99%と大変高い評価をいただきました。いただいた感想コメントの中から、一部をご紹介させていただきます。

・きしもとさんの「船に乗った子どもとおとなのイラスト」のお話が分かりやすかった。
・第二学区学童さんの現場での実際の取り組みが聞けたことが、とても参考になりました。
・子ども主体性について考える2時間でした。ついつい、大人の事情を押し付けている場面があり、申し訳ないと日々葛藤しています。
・講演や事例報告、チャットでのやり取りを見ると、各拠点で子どもたちの立場に立った考え方が一般的に広がっているのだなと実感しました。

今回の勉強会を通して、「日ごろから悩んでいたことがテーマだったので、これからのヒントにしたい」「とても共感できる事例だった」等、嬉しいお声が多く寄せられました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!
最後になりますが、今回の開催をもって、第1回からの参加人数が延べ11,000名を超えました。
これほど多くの方々に関心を寄せていただいたことへ、感謝申し上げます。今後も学びの機会をさらに発展していけるよう、今年度より当団体内に「全国子どもの居場所支援チーム」を立ち上げました。これからも、様々な機会を通じて全国の放課後の居場所づくりを応援してまいります。

文・放課後NPOアフタースクールスタッフ/加藤


本研修は、日本財団様の助成により開催いたしました。

▼これまでに実施した勉強会のレポートはこちら!
第1回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2022/07/36561/
第2回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2022/12/38145/
第3回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2023/03/39051/
第4回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2023/07/39854/
第5回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2023/12/40633/
第6回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2024/03/41330/
第7回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2024/12/43529/
第8回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2025/02/44253/
第9回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2025/07/46265/

【本件および研修会等のご依頼に関するお問い合わせ先】
特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール 放課後勉強会事務局
Mail:benkyokai[at]npoafterschool.org
※[at]を@に変換してください。