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【ご報告】第5回放課後勉強会「子どもまんなか!私たちで描く、これからの放課後」多様な子どもの育ちを支える地域の力

研修

放課後NPOアフタースクールでは、放課後に関わる方や子どもの居場所づくりにご興味のあるすべての方を対象として、オンラインにて放課後勉強会を開催しています。

第5回目のテーマは「多様な子どもの育ちを支える地域の力」
地域に子どもの居場所をつくることがどういうことなのか、放課後現場と地域のかかわり方など、放課後NPOや全国での実践事例を交えてお話をしました。

▼第5回目のご案内情報はこちら
https://npoafterschool.org/archives/news/2023/09/40170/

今回の報告レポートは「放課後の事業を通して、地域と連携するっていいことだと思うけど、誰と何をやればいいの?」という、放課後と地域連携のいろはのいの字を知りたい筆者の視点からお届けします。


■オープニングトーク
オープニングトークでは当団体代表の平岩が、地域と連携することで子どもたちはより豊かな体験をできること、地域の方から「市民先生」を募ることでその体験をより深められることなど、地域連携のスタートラインに立とうとしている人にも向けてお伝えしました。

「何から地域連携を始めればいいのか」という質問に対しては、「なにやりたい?と、子どもに聞くところから始めてみる」と述べ、「放課後は小さなことでも子どもが自分で選べることが大切」「放課後の自由度こそが、子どもも大人も楽しくなる要素」とまとめました。

地域の皆さんと一緒に活動するなると、手続きや人手が…という部分も想像してしまいがちですが、子どもたちがやりたいと望んでいることがわかると大人もやる気が出る。
難しく考えすぎず、まずは子ども自身に聞いてみるという一歩がポイントでした。


■Part1 「地域の大人の願いと子どもたち」
続く放課後NPOスタッフの渡部の話では、地域の大人との連携やかかわり方について、インタビューを通じてより深く考えを巡らせます。

「楽しんでいる大人(自分)を見て、子どもたちに前向きな将来を感じてほしい」、「習い事のように肩に力を入れすぎず、なんだか楽しいなと感じたり、『できた』を自信につなげてほしい」といった地域の大人がもつ子どもたちへの願いや、「子どもたちの過ごしたいと思う居場所づくりを、一緒に力を合わせてつくっていくことを通して知ってもらえたら」など、実際に放課後現場へ入ってみたからこその想いを感じました。

地域の大人が協力し合うことによって、放課後の過ごし方や運営に選択肢が増えるだけでなく、子どもをまんなかにした地域内でのつながりが大人の居場所にも広がっていく。
放課後の時間は、子どもだけではなく大人にとってもWell-beingにつながるのですね。


■Part2 実践事例共有-「子どもと大人の『好き』をつなげる人材発掘」
明るく語り始めたのは、放課後NPOのスタッフで、千葉市で活動している放課後子ども教室総合コーディネーターの岩瀬と久野。
どうやって一般の人から「市民先生」を発掘しているのか、人材発掘を担当するのはどんな人が向いているのかを紹介しました。

「街行く人がみんな市民先生に見えます」と笑顔で話す岩瀬は、「個人の市民先生」を日常生活の中から発掘。日ごろから名刺を持ち歩き、自身の友人をはじめとして、受診した歯医者さんなどビビッと来た人に声をかけると話しました。

一方、久野は「法人・団体・大学などの市民先生」を対象に、大学祭でサークルやゼミの方に声をかけたり、学生ボランティアやワークショップなどの活動をしている人から発掘をしているとお伝えしました。

コメントでも続々と質問や感想が寄せられ、頷きながらメモをする参加者も。
筆者自身も、質問や回答を通して「市民先生」への理解をぐっと深めることができました。



 

Q.市民先生のプログラムが子どもにうけなかったり、失敗することはある?
A.時々あります。サポートとして、事前に打ち合わせをしたり、当日の進行を手伝ったり、盛り上げたりしています。

 

Q.地域の第三者の大人との協働にあたって、安心・安全管理をどうしている?
A.放課後NPOでは、講師やボランティア全員と誓約書を交わしています。誓約書を交わすことに難色を示す方は、検討してお断りをすることもあります。

 

Q.子どものやりたいことが無いときはどうする?
A.特に低学年だとやりたいことの引き出しが少ないので、やりたいことを聞かれても悩んでしまう(やりたいことが無いと思う)ことがあると思う。最初からすぐにというのは難しいと思うので、大人が普段の過ごし方や様子に合わせてあげて、発達とともにやりたいことが少しずつ増やしていければよいと思います。

■実践事例共有-「地域、保護者で集える活動づくり~お祭り~」
都内の小学校でアフタースクールを運営している放課後NPOスタッフ齊藤と武田からは、今年の夏に実施した「お祭り」(以下、「サマーフェス」)をレポート。

「サマーフェス」は地域交流の場となることを目的に、全2日間にわたって開催。1日目、地域の方々が主催したお楽しみブースには、近隣の印刷会社からの「ぬりえ」や美大生の「アートブース」など8つのお店が。2日目には子どもたちが主体になって「アイロンビーズ屋さん」「しゃてき屋さん」などを出店し、さらには日々の想いを叫ぶ「告白大会」も実施されました。


「『お祭り』では、子ども主体の企画がつくることができて、地域の大人も協力しやすい。子どもたちが企画するお祭りを、地域みんなで応援することで、地域の居場所につながっていく」と事例を紹介。
地域の大人として子どもたちとの関わり方を手探りしている方にとって、「出店」とやる事がわかりやすくなっていると動きやすくなる。協力する側にとっても嬉しいポイントですね。

また、この拠点では地域とのつながりを発展させることで、物品の貸し出しなど更なる協力を得られたそう。拠点スタッフだけではなかなか実現が難しいことも、多くの大人が手を取り合うことで可能性がより広がるのだなと思いました。

Q.地域の協力者には高齢者も多い。お願いや関わり方にポイントはある?
A.なるべく負担の少ない部分のサポートをお願いしている。今回の「サマーフェス」でも、1つのお店をというのは負担になってしまうので、スタンプラリーのスタンプを押してもらうなどをお願いしました。

 

Q.特に盛り上がったお店は?
A.体験をするものが人気でした。ボウリングなど得点で景品がもらえるもの、ハーバリウムやスノードームづくりなど。

■実践事例共有-「学校施設全体を活かした活動設計」
続けて、放課後NPOで運営しているアフタースクールの事例を基に「学校施設の活用方法」と「学校との連携」について紹介。

都内で運営しているアフタースクール拠点の1つでは、「この時間はみんなで○○をする」といった時間は定めず、子どもたちが自分で何を・どこでするのかを選ぶことができます。
学校から毎日異なる4~5つの部屋を借りてそれぞれの活動に割り当てをしており、「その日ごとに違う教室を利用すること」「学校の先生と相談して決めたルートを通れば、大人の引率なく子どものみで自由に教室移動できること」が特徴です。

他にも、「放課後専用ではない場所をどのように活用しているのか」を別の都内アフタースクール拠点の例からご紹介。
この拠点では放課後用の部屋がないため、普段学校でオープンスペースとして授業でも使われる場所を利用。放課後の時間には可動式の机や棚を配置することで、子どもたちの居場所をつくっています。

特徴的なのは、地域の人が作ってくれた本棚やランドセル置き場といった棚。キャスター付きで自由に移動させることができるため、準備や原状復帰のやりやすさ、子どもたちに合わせた環境設計が可能になりました。

こうした学校活用のために学校側とコミュニケーションを重ね、信頼関係を構築。

学校側への相談の際、施設利用NGな場合はその背景にある考えを想像してみること。学校優先というスタンスを崩さず、学校側の懸念も含めてリスクや対策を一緒に考え認識を合わせること。そして学校施設をなぜ利用したいのかの目的や、実際に利用する子どもの声を届け、知ってもらうこと。大人も子どもも利用時のルールは守ること。

これらを念頭に対話を続け、気持ちを伝えて歩み寄ることで実現したそうです。実現可能な範囲を少しずつ探っていくことがポイントだと思いました。
 

Q.引率無しでの教室移動は、どうやって学校に許可を取った?
A.まずはスモールステップで、相談し合いながら少しずつ実現していきました。最初は全て大人が引率していましたが、移動したい子だけを引率したり、学校の授業に支障のない道を子どもたち自身で引率するなど、数年かけて少しずつどこまで大丈夫なのかを学校の先生と確認しチャレンジしていきました。

 

Q.学校施設利用にあたって、セキュリティや鍵の管理はどうしている?
A.基本、現場から副校長先生や教頭先生といった窓口になる先生方にご理解いただけるようコミュニケーションをとっています。鍵の受け渡しについて、夏休みや夕方までの開室でも先生方や管理の方がいらっしゃるため、学校内に放課後NPOのみになることが無いこと、また、放課後NPOで利用している居場所や動線は1~2か所と小規模なため、施錠をする箇所について取り決めを交わして運用しています。

■Part3 「子どもの育ちを地域ぐるみで支えるために」
最後は、文部科学省の能見様より、これまで紹介した実践事例を踏まえ、地域連携を後押しする国の施策や取り組みを事例を織り交ぜながらご紹介いただきました。

放課後での学校施設の一時利用(タイムシェア)では、特別教室の一時的な利用を各自治体に促し、利用の際には責任の所在を明確にしておくと学校活用を円滑に行うことができると通知、学校施設の放課後活用を推進しているとのこと。

実践事例共有の「学校施設全体を活かした活動設計」でも紹介したように、放課後が学校施設を使う上でのルールや緊急時の連携などを決めておくことで、学校側の負担感軽減やメリットも生まれ、お互いの距離感が縮まるのですね。

地域全体で学校や子どもたちを支える「コミュニティ・スクール」は全国の公立小学校の約半数で導入。地域と学校がつながり、みんなで課題の解決に取り組む施策です。

八王子市の「コミュニティ・スクール」の例では、放課後児童クラブ関係者が運営メンバー(学校運営協議会委員)になったことで視点の共有ができ、学校外にあった放課後児童クラブを学校敷地内へ移転する計画を立てることがスムーズに進行。情報共有や連携もしやすくなるなどメリットがあったそうです。

地域と学校をつなぐコーディネーター(地域学校協働活動推進員)は全国に3万人。全国の自治体の7、8割が設置しているため、放課後NPOの事例のような放課後を専門とした人員配置が難しい場合でも、こうしたコーディネーターやコミュニティ・スクールとの連携により、可能性を広げることができるといった取り組みのヒントも提示いただきました。


■おわりに
最後に、参加者の皆様からお寄せいただいた感想を、一部ご紹介いたします。

・改めて子どもたちの居場所の幅を広げるためには地域の方とのコミュニケーションが重要だと感じました。子どもが主体に活動ができること、協力してくれる大人も楽しめることを要点において活動をしていきたいと思います。

・全国に、子どもたちのために課題に取り組んでいらっしゃる方がたくさんいることが分かり、励みになりました。信頼できる大人がいる様々な活動が同時展開していて子どもは自由に渡り歩ける、そんな時間が過ごせる放課後、素敵だと思いました。

今回の勉強会では、日本全国からお集まりいただいた参加者の皆さん同士でチャットのやり取りをしていたのがとても印象的で、離れていても、立場が違っていても、皆様それぞれが「子どもたちにより良い環境を」と願っていることを強く感じました。

地域連携に向けて、大人同士での対話はパワーが必要になることも多く、なかなかすぐに実現できることではないかもしれません。
まずはスモールステップ、「こどもまんなか」を軸に少しずつ知ってもらうことや認識をそろえていくことが大きな一歩につながるのではと思いました。

次回、第6回放課後勉強会は3月を予定しております。続報をお待ちください!

文・放課後NPOアフタースクールスタッフ/伊嶋



本研修は、日本財団様の助成により開催いたしました。

▼これまでに実施した勉強会のレポートはこちら!
第1回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2022/07/36561/
第2回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2022/12/38145/
第3回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2023/03/39051/
第4回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2023/07/39854/

【本件および研修会等のご依頼に関するお問い合わせ先】
特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール 事業開発チーム
Mail: kaihatsu[at]npoafterschool.org
※[at]を@に変換してください。

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