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【ご報告】第8回 こどもまんなか!放課後勉強会 「一人ひとりの居心地の良い環境づくり」

放課後NPOアフタースクールでは、放課後に関わる方や子どもの居場所づくりにご興味のあるすべての方を対象として、オンラインにて放課後勉強会を開催しています。

第8回目となる今回は、これまで皆様からいただいた「様々な事情により『子どもたちに居心地の良い環境』をつくるのが難しい」という声に焦点をあて、「一人ひとりの居心地の良い環境づくり」をテーマに、実践事例を交えながら考える機会となりました。

今回も各方面からご関心をお寄せいただき、全国各地から総勢1,400名以上の方々にお申し込みをいただきました!また、170か所以上でサテライトでのご視聴もいただき、子どもの居場所づくりに携わる皆様の関心の高さを実感しております。

▼第8回目のご案内情報はこちら
https://npoafterschool.org/archives/news/2025/01/43717/


放課後勉強会ダイジェスト
■ はじめに|本勉強会について‐課題と背景‐
冒頭、司会から事前アンケートの結果を踏まえた、放課後の居場所の環境面に関する実態について共有しました。

運営している施設について、必要な広さが「十分にある」という回答が2割にとどまり、6割がひとりや少人数になれる空間が「ない」、スタッフの場所は5割以上が「ない」との回答で、「子どもたちが安心して居心地よく過ごせる環境」の実現が難しい実態があることが見えてきました。

さらにそのような環境下では「遊びの種類が増えるとスペースが狭くなり、子どもがやりたいことを制限される」「1人や少人数になれる空間や大人の作業スペース・休憩場所が不足している」等といった課題が発生していることもわかりました。


■ 基調講演|子ども一人ひとりが居心地の良い環境づくり
メインパートの前半では、早稲田大学人間科学学術院教授で、こども環境学・環境心理学・建築計画学がご専門の佐藤将之教授 からお話をいただきました。

場を和ませるようなリラックスした雰囲気の中、佐藤教授の温かい人柄が感じられる、親しみやすい語り口で進められた講演は、「やってみてから調整すればいい」「子どもたちが安心して過ごせる環境は、大人が安心して働ける環境でもある」等、参加者の方々に寄り添うような印象的な言葉がたくさんありました。

佐藤教授から教えていただいた環境づくりのポイントの一部をご紹介いたします。

・「環境のちょっとした変化・工夫」で子どもたちの行動が変わる
・「環境づくり」を大げさに考えず、できること・気になるところから始める
・「一度で完璧を求めない」子どもたちの反動を見ながら試行錯誤を重ねる

参加者の方々からは講演を踏まえて「意図的な死角」というキーワードや音響についての気づきに関するコメントをはじめ、「楽しいエピソードや事例が多くて分かりやすかった」「勇気をもらった」「まずはトライしてみたい」等のお声が多く寄せられました。

参加後アンケートでいただいた、感想コメントの中から一部紹介させていただきます。

・環境について専門の佐藤教授のお話は、現場ともまた違った視点で考えることができ DIYのハードルも下がる気がして、とても良かった。
・音や環境、導線等についての研修は今まで出たことがなかったが、実際に今の悩みとつながっていてとても参考になった。
・人数と場所の広さの関係上、なかなか1人の空間を作るのは難しいと思っていたが、工夫次第でそういったスペースを作ることができると知った。


■ 環境改善ワーク
佐藤教授の講演を踏まえ、仮想の専用部屋の現状・平面図をもとに、環境改善のためのアイディアを検討し共有するワークを行いました。

参加者の皆様からは、たくさんのコメントをミーティングチャットにお寄せいただきました。その中から一部を紹介させていただきます。

①動線・レイアウト

・遊ぶものが同じ壁側にあるため、そこに子供が集中してしまうことがある。それぞれに離れた場所にコーナーとして作るのはどうか。
・座卓が多いように感じるので座卓を減らして、本棚、ブロックボードゲーム前をゴロゴロできる遊びスペースにしてみる。
・座卓は折りたためるものにし、端に寄せておく。スペースが確保できるし、上に乗る問題も解決できると思う。

②収納

・パッと見て何があるのか分かりやすいように、表示を貼ったり透明のボックスにしたりする。
・工作材料と工作で使う道具が離れているので近くに置く。
・やりたいことが交差しないように、収納する位置を変える。

③その他、気付き

・静かに過ごしたい子のためにカーテンなどで壁を作り、落ち着ける場所をつくる。
・子どもたちはその日によって遊びたいことが変わるので、座卓を固定せず、移動させる、くっつけるなど有効に使って遊びや勉強のスペースを作っている。
・子どもの背丈ほどの職員用の仕切りがあると、ほっとできる。


■「居たい」「行きたい」「やってみたい」を引き出す環境づくり ‐実践事例とお悩み共有‐

①環境づくり実践事例共有 ~放課後NPOアフタースクール編~
当団体の直営拠点の運営に長年携わっているメンバーが、アンケートでいただいたお悩みを踏まえて実践事例を紹介しました。

専用の部屋がない状況でも、その日の子どもたちの様子や人数、興味関心に合わせたり、子どもたちと話し合ったりしながら試行錯誤を重ね、環境づくりに取り組んでいます。

 

学校の教室をタイムシェアする工夫
可動式の家具を活用するなど、転倒防止の工夫をしながら柔軟に空間を調整
 
子どもたちと一緒に試行錯誤しながら環境づくり

落ち着いて過ごせるエリアと遊びのエリアを分ける配置を、子どもたちと「どんな空間にしたいか」を話し合いながら決めた
➡実際に配置を変えたことで「子どもたちの動線が良くなった」「静かに読書できるスペースが生まれた」などの変化があった

参加後アンケートでいただいた感想コメントの中から一部を紹介させていただきます。

・ワンフロアの広い空間の中にさらに個別の空間を作ることは不可能と思っていたため、今回の研修を受け多くの刺激を受けた。また、その日その日のレイアウトを変えられるように収納家具を可動式にするということも参考になった。
・放課後NPOの実践例は、狭い環境の中でも居心地の良い環境をつくるポイントでまとめられていてとてもわかりやすく、参考になった。

②居場所の環境改善の”観点”を磨く ~新保育環境評価スケール編~
次に、放課後の居場所の環境を改善するためのツール活用とその事例について、社会福祉法人こばと会様の活用事例を併せてご紹介しました。

今年度より当団体では「放課後の居場所の質を可視化 子どもへの影響を検証する調査研究」を実施しています。その中で活用している「保育環境評価スケール④」とその活用方法についてご紹介しました。この「保育環境評価スケール④」は「現場をふりかえるための共通のものさし」として捉え活用しています。

このツールを活用するときに大事にしているポイントの一部をご紹介します。

・評価の点数を上げることが目的ではなく、項目の意味を読み解きその居場所に合う形でどう改善に活かすかが重要
・「共通のものさし」として活用することでスタッフの目線が揃い、拠点間の振り返りや改善が進みやすくなる
・「まずやってみる」こと、そして継続的な試行錯誤の改善が重要

会の終了後には参加者の方から「子ども、大人のための環境を改善したいと思っても基準が分からなかったので目安として評価スケール④という存在を知る事ができとても参考になった」というコメントもいただきました。

③お悩み共有
会の最後は、参加者の皆様からいただいた様々な「お悩み・質問」の中から、改善のヒントとなる事例やアドバイスを共有する時間をつくりました。一部をご紹介します。
 

お悩み・質問:おやつの配膳場所や食器の収納の工夫、着眼点などありますか?
回答:ドイツの学童の例より(佐藤教授)
・収納を隠す・隠さないは一概に決めるものではなく、子どもたちと対話しながら運用方法を決めることが大切。
・環境に「これが正解」というものはない。オープンにするほど、子どもたちが環境を理解しやすくなる。

 

お悩み・質問:学年によって身長が異なるため、意図的な死角を作る際の仕切りの高さはどうすればよいか?
回答:仕切りの高さの違いを活かしながら、多様なコーナーを作る(佐藤教授)
・「年齢に応じて仕切りの高さを変える」という考え方は間違いではないが、ポイントは「異なる年齢の子どもたちが同じ空間にいること」。

■ おわりに|子どもたちのエピソード
最後に当団体代表の平岩から、事前アンケートでお寄せいただいた中から、「子どもの個性を尊重しつつ、適切な環境を整えたことが、子ども自身の成長につながっただけでなく、周りにも良い影響を与えた」というとても素敵なエピソードをご紹介させていただきました。

単に物理的な環境だけでなく、そこにいる人々や関わり方も含めて考えることが子どもたちの成長において重要であること、また、子どもたちにとって 「自分の考えを自由に表現できる環境」があることで、創造性が育まれ新たな学びが生まれるとお伝えし終了しました。

参加後アンケートは170件以上の回答、満足度は98%と大変高い評価をいただきました。
感想コメントの中から一部をご紹介させていただきます。

・改善に向けての視点やきっかけをもらえた。 また、子どもたちと一緒に考えていくという、大切なエッセンスを教えてもらった。
・環境を整える事の目的や、現状をふまえて出来ることを考えることができた。スタッフ自身がハッピーであり心に余裕がある事が、子ども達によい環境になると思うことができた。
・ゾーニングをする中で、やはり1人ひとり感覚も違うため、「その子にあった環境作り」の難しさを感じた。
・保育環境評価スケールを自分達の活動に当てはめてみて、環境改善に繋げたい。

今回の勉強会を通して、「取り入れたいアイディアがたくさんあった!」「まずはやってみることを大事にしたい」という声が多く寄せられました。

今後も全国各地の皆様とつながり、共に学びを深められる機会をつくっていきたいと思います。ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました!

文・放課後NPOアフタースクールスタッフ/吉永


日本財団

本研修は、日本財団様の助成により開催いたしました。

▼これまでに実施した勉強会のレポートはこちら!
第1回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2022/07/36561/
第2回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2022/12/38145/
第3回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2023/03/39051/
第4回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2023/07/39854/
第5回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2023/12/40633/
第6回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2024/03/41330/
第7回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2024/12/43529/

【本件および研修会等のご依頼に関するお問い合わせ先】
特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール 事業開発チーム
Mail:benkyokai[at]npoafterschool.org
※[at]を@に変換してください。

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