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【ご報告】第7回 放課後勉強会 「インクルーシブな居場所づくり ~困り感を抱えやすい子への関わり方・支援~」

研修

放課後NPOアフタースクールでは、放課後に関わる方や子どもの居場所づくりにご興味のあるすべての方を対象として、オンラインにて放課後勉強会を開催しています。

第7回目となる今回は「インクルーシブな居場所づくり」をテーマに、様々な子が集まり一緒に過ごす放課後の場において「困り感」を抱えやすい子どもたちに焦点を当てながら、子ども一人ひとりに応じた関わり方や支援について、実践事例を交えながら考える機会となりました。

今回も各方面からご関心をお寄せいただき、47都道府県の各地から総勢1,400名以上の方々にお申し込みをいただきました!また、160か所以上でサテライトでのご視聴もいただき、子どもの居場所づくりに携わる皆様の関心の高さを実感しております。

▼第7回目のご案内情報はこちら
https://npoafterschool.org/archives/news/2024/09/42513/


■はじめに「今放課後で起きていること(課題と背景)」
まず司会進行が、個別支援が必要な子どもたちの数は年々増加傾向にあり、放課後の居場所においても、スタッフの対応力や研修の強化が求められていることが述べました。その一方 現状として、スキル向上のための機会や時間を、十分に確保することが難しいことについても言及しました。

<小学校における発達障がいもしくはその疑いがある児童の増加>

■基調講演「『困り感』を抱える子と放課後」
メインパートの前半では、臨床心理士・公認心理師として重度障がい児支援や公立小学校の放課後学童クラブに関わり、現場でのサポートや相談を行っている須賀田真理先生からお話をいただきました。
まず、当事者や周りの人の「困り感」を減らしていくために、適切な環境を整えたり、必要な配慮をしたりすることが大切であるという「社会モデル」の考え方について説明がありました。

次に、「子どもたちが過ごし方を自分で決めて、自由に過ごすことができること」や、「異なる学年の友達とも交流できる」という放課後の特徴について説明がありました。放課後は状況の変化が大きいですが、これによって非認知能力、つまり社会で生きる力が育まれます。
須賀田先生は、特に発達障がいの特性を持つ子どもにとっても、放課後の自由な環境が生きる力を伸ばす重要な場であり、放課後には大きな可能性があるとお話しました。


放課後は、大人が子どもたちを評価する場ではなく、ありのままの自分でいられる場として、子どもの自己肯定感を高めるということを述べました。また、須賀田先生は、スタッフが保護者に寄り添い、学校との連携を通じて子どもの多面的な理解を深める伴走者的存在でもあるとまとめました。

■検討ワーク「『困り感』事例での対応・関わり」
メインパートの後半では、当団体の直営拠点の運営に長年携わってきた渡部が、事前アンケートの中から多くご意見をいただいた3つのテーマ「トラブル対応と他害への処理」「保護者対応・関係構築」「個別と集団への対応/チーム連携」について、須賀田先生と参加者の皆さんと共にケーススタディを行いました。

<こんなときどうする?ケース①トラブル対応と他害への対処>

参加者の皆様からは、たくさんのコメントをミーティングチャットにお寄せいただきました。その中から一部を紹介させていただきます。

・始める前にルールを決める。トラブルが起きたら一旦やめてルールの確認をする。
・Aくんの勝ちたいという思いが強いのは良いことだが、周りに上手く言葉で伝えられないことで手が出てしまうのではないか。
・子どもたちが自分の声を聴いてもらえると思えるかどうか、信頼関係は本当に基礎になるなと思う。

須賀田先生は、ドッジボール中に起きたトラブルはAくんの「勝ちたい」「自分の主張を聞いてほしい」という思いが背景にあり、スタッフは一度、Aくんがどういう気持ちだったかを代弁したり、受け止めたりすることが大切だという見解をお話されました。

また、渡部は、事前にルールをきちんと確認する必要性や、トラブルが起きた時のスタッフの冷静な対応の重要さについて触れ、Aくんの困り感が他の子どもに与える影響や、周囲とのコミュニケーションの課題にも意識を向けていく必要があると語りました。

<こんなときどうする?ケース②保護者対応・関係構築>

以下、参加者の皆さんがチャットで寄せてくださったコメントの中から一部を紹介させていただきます。

・Cさんの今日の出来事、良いところもたくさん保護者に伝えていく。まずは信頼関係を築くために、Cさんの長所を共有する。理解者だと示す。
・そういう場合の保護者の関わり方を尋ねてみる。こまめな情報の交換も大切。家庭でのその子の伝達方法を聞いてみる。
・スタッフの視点で困っていることを伝えるのではなく、Cさんがこんなことで困っていると子供の視点で困っていることを伝える。

須賀田先生は、Cさんの特性や「困り感」に対する理解を、スタッフ全体で共有することが大切だと説明。保護者との信頼関係を築く際にも、保護者に対してCさん自身が困っていることについてきちんと説明し、支援方法や進捗状況をしっかりと伝えること、そしてスタッフ全体での一致した対応で、サポート体制を強化することが重要だと話しました。

<こんなときどうする?ケース③個別と集団への対応/チーム連携>

以下、参加者の皆さんがチャットで寄せてくださったコメントの中から一部を紹介させていただきます。

・落ち着いている時の個別対応をいろいろな支援員が行い、トラブルの小さい物から他の支援員も対応し、支援員一人一人が対応に慣れていく。
・周りの子どもたちにも「あなたが困っていることはどんなこと?」と訊く。Dさん個人への特別対応というだけでなく、〈みんなが良い感じで過ごせる空間〉をつくるための調整であることを意識する。

須賀田先生は、周りの子に伝える際に「Dくんはお友達と一緒にうまく遊べるようになるために先生と一緒に練習している最中だから、みんなで応援しようね」という方向性で声かけをすることで、一定の理解が得られると語りました。
また渡部は、納得できない子どもがいる場合も個別性に目を向けていくことが、お互いへの理解につながっていくと語りました。
須賀田先生は最後に、Eさんだけでなく、他のスタッフともDくんの支援方法を共有して支援できる体制をつくることが、行動の改善に繋がっていくとまとめました。

■クロージング 「子どもたちのエピソード」
最後に当団体代表の平岩が、「困り感」を抱えた子どもの成長エピソードを、事前アンケートでお寄せいただいた中からいくつかご紹介しました。環境やスタッフの理解が子どもの成長の支えになること、個人のペースに合わせて伴走できることが放課後の居場所の価値だと語り、勉強会は終了しました。


■情報交換をし合った「放課後ゆる座談会」
今回、初の試みとして、勉強会終了後に「放課後ゆる座談会」と題して、希望する方は参加者同士でお話できる時間をつくりました。
少人数のグループに分かれ、今回の勉強会での気づきや感想はもちろん、各施設での取り組みに関する情報交換などを行いました。

短い時間でしたが、「他の拠点が実践していることについて具体的に話を聞くことができ、新しい視点をもらってとても参考になった」というお声もいただきました。

参加後アンケートは150件以上の回答、満足度は98%と大変高い評価をいただきました。
感想コメントの中から一部紹介させていただきます。

・身近な事例をたくさんお聴きすることができて、とても勉強になりました。 参加者もチャットに書き込むなど、活発なディスカッションができることに感心しました。
・専門の視点でのお話を聞けたことがとてもよかったです。
・周りの困り感を優先しがちなので、本人の困り感をきちんとくみ取り考えてあげることが大切だなと思いました。
・困り感を抱える子への対応の難しさも、スタッフの対応力やスタッフ間の共通理解を深める研修や経験の積み重ねで、困り感の捉え方も変わってくることを改めて認識しました。日々の対応の難しさも、子どもたちに寄り添いながら、スタッフの連携で少しずつ困り感を克服できる工夫をしていきたいと思いました。

今回の勉強会を通して、「他の多くの現場でも同じような悩みを抱えていて、たくさんの方が前向きに試行錯誤していることを知って励まされた」という声が多く寄せられました。
今後も全国各地の皆様とつながり、共に学びを深められる機会をつくっていきたいと思います。ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました!

次回、第8回放課後勉強会「一人ひとりのやりたいを叶える環境づくり(仮)」は2月を予定しております。続報をお待ちください。

文・放課後NPOアフタースクールスタッフ/吉永


日本財団

本研修は、日本財団様の助成により開催いたしました。

▼これまでに実施した勉強会のレポートはこちら!
第1回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2022/07/36561/
第2回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2022/12/38145/
第3回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2023/03/39051/
第4回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2023/07/39854/
第5回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2023/12/40633/
第6回:https://npoafterschool.org/archives/blog/2024/03/41330/

【本件および研修会等のご依頼に関するお問い合わせ先】
特定非営利活動法人 放課後NPOアフタースクール 事業開発チーム
Mail: kaihatsu[at]npoafterschool.org
※[at]を@に変換してください。

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