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【南あわじ市:3年間の軌跡】スペシャル対談 南あわじ市、学ぶ楽しさ日本一!」守本市長×放課後NPOアフタースクール平岩代表(下)

行政協働

放課後NPOアフタースクールは2019年より兵庫県南あわじ市の放課後事業支援を行ってまいりました。地域の皆様とあゆみを重ねながら4年目を迎えた現在、南あわじ市の放課後の変化を地域の方々と実感することが増えてきました。今回、四国エリアで活動されているライターの中村明美さんにご協力いただき、南あわじ市の放課後を取材。全6本の記事をご寄稿いただきました。南あわじ市の放課後に起きたことをぜひ多くの方にご覧いただき、放課後の時間が持つ様々な可能性を感じ取っていただけたら幸いです。


6:スペシャル対談 南あわじ市、学ぶ楽しさ日本一!」守本市長×放課後NPOアフタースクール平岩代表(下)

特集記事 目次:
1:自治体直営の学童保育をアフタースクールへ !モデル校第1号の現場から
2:「「放課後が、楽しい!」子どもと保護者の思い
3:「スタッフが、前よりも自分らしくなった」モデル校第2号、広田スタッフ
4:「自分も、子どもも、どう楽しむか」市民先生の思い
5:子どもたちが行きたい、楽しいと思える放課後にしたい。市役所職員の思い
6:スペシャル対談 南あわじ市、学ぶ楽しさ日本一!」守本市長×放課後NPOアフタースクール平岩代表(・下←今ここ

南あわじ市は2021年、「学ぶ楽しさ日本一!」という旗印を掲げて、市内の教育環境の充実に取り組んでいます。2022年現在、西日本でもっともアフタースクール事業を広く進めている同市。守本憲弘市長と、放課後NPOアフタースクールの平岩国泰代表の初対談。
「上」では、地域の中で、冒険したり、秘密基地を作ったりと楽しい時間を過ごされていた守本市長のお話など自由な放課後のあり方が話題に。さて、「放課後大好き」なお二人の議論は、後半、どんなふうに発展したのでしょうか。より一層深い内容をお楽しみください。

平岩代表:守本市長のように、アフタースクールを理解してくださる方々も増えてきています。一方で、アフタースクールを知らない方々に向けて、私たちができることがあるとも考えています。学童のスタッフさんたちの中には「アフタースクールになるのは不安だ」という声もあるかなと思いますが、その辺りは南あわじ市はどうだったのでしょうか。

守本市長:保護者の方、地域の方から「早く自分の地域にもアフタースクールを作って欲しい」と言う声は聞きます。しかし、アフタースクールにネガティブなことをおっしゃられる声は聞いたことがありませんね。

一方で、議員さんと審議をやっていると「アフタースクールは、学童保育なのか、放課後子ども教室なのか」という質問を受けることがあります。学童に該当する子どもたちの分は学童で補助金をいただき、放課後子ども教室の子どもの分は、放課後子ども教室として補助金をいただいている。「1つの事業の中で事業を行う」という既存の考え方でいくと、アフタースクールは理解ができないのかもしれないですね。

平岩代表:子どもたちからは、放課後子ども教室と学童が別々の場合、「なんで同じ学校の子と遊べないの?」という声を聞くことがあります。私たちは、子どもたちの願いを叶えて一緒にしてあげるのがいいと思ってやってきました。ですので、住民の中から、ポジティブな声があることは心強いですね。

守本市長:現在の問題は、スタッフの育成がついていっていないということでしょうか。やっぱり意識改革には時間がかかります。活動がどんどん広くなっているので、広くなった活動をどう支えていくか、その方々をどう集めていくかがネック。今の拡張スピードに合わせた人材育成が課題ですね。

平岩代表:私たちも現場に入らせていただいて、スタッフのみなさんの声については心を砕いて考えてきました。本当に子どもたちのためになることってなんだろう?という原点に戻ると、同じ目線に立てるようになりますね。
では、次の質問です。「地域で子どもを育てる」という点について、アフタースクールに期待することはなんでしょう。

守本市長:期待する部分は大きいですね。南あわじ市は「子育ての喜びが見えるまち」も目指しています。子育ての当事者だけではなくて、周辺の人にも、喜びが見える、そういう雰囲気づくりを大事にしたいと思っています。まちの先生をしてくださっている地域の人にとっても「自分も、子どもたちを育てるのに一役買っている」という意識。この点、アフタースクールの役割は、好影響があるなという確信はあります。

平岩代表:地域の人は「子どもたちの成長に関わりたい」と言う思いがあるけれど、学校はそこまで対応できないのが現状です。でも、放課後は地域の人がすごく入りやすいんですよね。

守本市長:今は学校とアフタースクールが分かれていますが、学校の先生方もアフタースクールに関わってもらうことで、学習指導要領に決められたスケジュールではなく、子どもたちが子どもたちのペースで大きくなることが発見できることもあるでしょう。そういった発見を授業の方でも反映するといったフィードバックができるようになるといいですね。

平岩代表:あるアフタースクールでの事例をご紹介してもいいですか?理科の星を見る授業から発展して、アフタースクールで実際に星を見ることになったんです。この時、担任の先生も、アフタースクールに参加してくださって、いつもの教壇と違って優しい顔になっていたようです。
子ども大人も本来は両方とも学習者のはず。放課後は、先生が本来の姿に戻れる時間なのかもしれません。

放課後は興味のあることに没頭できる時間です。学校では理論や知識を教えてもらって、興味の幅を伸ばしていくのは、放課後にということがいいのかなとも私は考えています。市長もウクレレを教えてくださっているとか。

守本市長:はい。一緒に遊んでいるというのが正しいかなと思いますが(笑)。他には、子どもたちと一緒にサッカーやらせてもらったり。決して何も教えてはいません。

平岩代表:僕が知っている市長さんの中では唯一、守本市長だけがアフタースクールに足を運んで遊んでくださっています。子どもたちは一緒に遊んでいる人が「市長さん」ということがわかっているのかな。

守本市長:名称として「市長」ということはわかっていると思いますが、市長ってどういうものかはわかっていないんじゃないかな(笑)。単なる呼び名ですよ。

平岩代表:楽しいですよね、子どもたちと遊んでいると。南あわじ市の事例は全国に成功例として発信していきたいと思います。

守本市長:成功事例というよりも、色々な課題があって、それを乗り越えて、スタッフも子どもたちもやっている我々自身も、確実に成長していると言う事例でしょうか。「試行錯誤して何かが生まれてきた」。それが真実かなと思います。

平岩代表:子どもたちの意見を聞いて、子どもたちの目線に立つと、そこにいつも答えがありますね。今後は、どんな未来を描いていますか?

守本市長:若い人たちに、特に子育て世代に、地元に帰ってきていただきたいと思っています。新型コロナ感染症の影響で、リモートワークが一般的になり、仕事をする場所が、かなり自由になってきました。住む場所を決定する要素の中に、「仕事」が無くなってきたんですね。南あわじ市が今後、他との差別化を考えていくとすると、教育の部分は大きいのじゃないかなと思っています。利便性はお金を使ってバスを走らせたりショッピングセンターを作ったりすれば実現できます。けれど、そこにきて子どもたちが楽しめるような教育環境を作るのは一大事業です。移住してくる皆さん、そこに住む地域の皆さんの気持ちが、教育は大事だと思っていないと叶いません。私たちは、それを先に作ることで、色々な若い人に住んでほしいと考えています。

平岩代表:今、保育園の待機児童問題が落ち着いてきました。次の課題は何かというと、放課後。親御さんたちは、習い事をやらせていないと心配な方も多く、送迎も大変です。私たちのアフタースクールは、学校内で過ごすことができるので送迎も必要なく、しかも普段の友達と習い事ができる場所です。それを目当てに、アフタースクールのある学区に引っ越してくる人たちも出てきています。「アフタースクールがあるから、この土地に住もう」というところに、私たちもぜひ貢献していきたいですね。「放課後作り」が「まちづくり」になっているということですね。素晴らしい結論が出ました。

守本市長:当初、放課後の改革をスタートさせる時、「どうやっていけばいいのか」という感じだったのです。当時の担当課長が「いい人たちが見つかったんですよ」ということで放課後NPOアフタースクールのみなさんと出会えました。今、4年目ですが、これまで丁寧にやってきていただいたおかげで、アフタースクール事業は、順調に進んでいると思います。この出会いは素晴らしかったなと感謝しています。

以上、6回に渡って連載してきた南あわじ市のアフタースクールの取り組み。実に20人近くの皆さんのお話を伺いました。「アフタースクール」と言う場を軸に、子どもも、大人も、そして地域の方も「自分らしさ」を見つけていった様子が伝わってきました。放課後の子どもたちに、日本の未来を変えるヒントも見えてきます。
アフタースクールが、もしも、全国の学校に広まったら?そんな楽しい想像を膨らませながら、この連載を終えたいと思います。
さて、あなたの学校には、もうアフタースクールは、ありますか?

文:中村明美

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