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【ご報告】7/14(木)シンポジウム「これからのまちづくりを考える―放課後の充実が地域にもたらすものとは―」


日本財団と神奈川県鎌倉市のご協力のもと、7月14日(木)に「放課後×まちづくり」に関するシンポジウムを鎌倉市で開催しました。当日はウェビナーでも同時配信を行い、北は青森、南は沖縄まで日本各地からお申込みをいただきました。今回初めて放課後とまちづくりをキーワードにシンポジウムを開催しましたが、放課後事業に関わる方をはじめ、議員の方や企画・政策関連部署など行政職員の皆様、「放課後」「地域の中の子どもの居場所」に関心のある方など様々な立場の方にご参加いただき、私たちにとっても新たな発見と学びの多い会となりました。

【シンポジウム開催の背景】
放課後NPOアフタースクールは「社会で子どもを育てる」を掲げ、放課後の居場所づくりを長年にわたり推進してきました。社会への門戸が開かれている放課後では、地域の市民先生やプロの講師、民間企業など学校外の方が関わりやすく、生きた学び・多様な体験活動を実践しています。子どもたちと地域、そして社会全体とのつながりの中で行う子育て・教育活動は、子どもの可能性を広げるだけでなく、地域全体の活性や魅力づくりの大きなポテンシャルを秘めているのではと感じるようになりました。
私たちも試行錯誤の連続ですが、子どもたちをまんなかに、まちを元気にしていく切り口として「放課後からはじめる」のもありかも!と感じていただけるきっかけになればと、今回シンポジウムの開催に至りました。

【シンポジウムダイジェスト】
■動画①前編:「ふるさとで育つ」鎌倉市の取組/「放課後はゴールデンタイム」放課後の可能性と事例紹介

まず、鎌倉市の松尾市長より鎌倉市のビジョンや市民活動の変遷を踏まえながら、鎌倉市の放課後事業「放課後かまくらっ子」を始めた背景をお話いただきました。10年前、待機児童の増加や活動部屋の過密化、学校との連携などさまざまな問題が重なり、子どもたちにとっては本当につまらない、そこに”いさせられる”という「とても残念な状況」だったそうです。

そんな時に、当団体代表 平岩の「放課後は子どもたちにとって本当に大事な時間」という話を聞き、「このまま子どもたちが我慢している状況を行政が作り上げているのは誠に申し訳ない、これはなんとかしなきゃいかん!」と放課後かまくらっ子をスタート。市長の強い決意を感じるとともに、今の形があるのもここまで推進されてきた現場のみなさんのご尽力あってこそと頭が下がる思いでした。

続いて、放課後かまくらっ子推進参与の猿渡氏から、放課後かまくらっ子の具体的な取り組みについてお話いただきました。その中で「放課後教育」という切り口から、教育分野に留まらず、地域への波及を含めた放課後のポテンシャルについてお伝えいただきました。

放課後教育は、カリキュラムがないため自由度が高く、様々な世代や属性の方が関わりうる多様性や発展性があり、地域の色々な方を巻きこんだ弾力的な活動が可能である点に言及。
「学校教育への参画に比べて、放課後教育への参画は心理的ハードルが低いので、放課後の場は子どもを軸に保護者や地域の方との出会いの機会をつくりやすい。鎌倉では少しずつだが、商店街や鎌倉女子大とのコラボなど実践も進み始めている。鎌倉の放課後教育理念である『出会い、つながり、ふるさとで自ら育つ』ことが、多様な人との関わりを生み、結果的に地域コミュニティの形成にもつながっていく。」
地域の方との接点を積極的に創出していくことで、放課後がその地域のハブのひとつとして機能しうるという指摘は、実感値としても納得度の高いお話でした。

続いて平岩から、放課後を取り巻く課題とアフタースクールでの市民先生や企業連携の取り組みについてご紹介しました。最後のまとめとして、「昭和の時代は機能していた学校×家庭×地域での子育てが現代では難しく、このバランスをよくする入口のひとつが放課後。いわゆるレバレッジポイントなのでは」という点に、ご自身の地域を想像しながら聞いてくださった方も多かったのではと思います。

■動画②後編:福島県楢葉町の復興事例紹介/パネルディスカッション
後半のパネルディスカッションでは、申込みの際にいただいた質問をテーマに進行しました。

Q.「田舎で高齢化率40%の地域です。高齢者は日中は高齢者サロンに出てくるが、地域で日常的に子どもたちの姿をみかけることもなく、コロナ禍でイベントもないので触れ合う場もありません。昔のように、地域で子育てする環境作りへのヒントを期待しています。(鹿児島県)」

これを受けて、猿渡氏から復興支援で地域コミュニティ再生を目指した福島県楢葉町の地域学校協働センターの取り組みをお話いただきました。

猿渡氏:ここでのポイントは、地域の施設と放課後子ども教室を隣り合わせ、つながる仕組みを意図的に作ったことです。その結果、子どもと大人で学びの循環や交流が生まれ、自主的な活動に発展しています。
一方で、学校での囲い込み現象により地域から子どもが見えなくなってしまうことを避けるため、積極的に地域の場に出向く活動も行っています。学校という場を活かしながら、地域に触れられる機会を放課後の時間を使って広げていくことで、子どもたちをはじめ、地域住民も子どもたちを知って、まちのためにやっていこうよという方向になっていくと考えています。

松尾市長:うらやましいなと思って聞いていました。鎌倉でも子どもたちが地域に出ていくというのがこれから先のポイントになる。地域の人たちも今やっている活動を子どもたちに紹介しに行き、子どもたちもまた地域に入っていくというのをさらに広げていけるといいですね。

 

Q「生涯学習課で地域学校協働本部活動を担当しており、学校と地域との協働をどう進めていくかが課題だと感じています。具体的な現場の声、特にやって良かったという声はよく聞きますが、当然その背景には悩みや葛藤もたくさんあると思います。現場の漏れ聞こえてきた本音も伺いたいです。(静岡県)」

松尾市長:どうしても学校に理解いただくまで時間がかかりますよね。学校に対しての期待がものすごく大きくなってきている中で、放課後でできることを知って学校の負担が減っていくことで、お互いがwin winになれるのではと思います。最近では、放課後の中でSDGsの教育を熱心にやってくれるところがあって、そういう取り組みを先生が知って、学校ではこうしようという感じで発展的になり、相乗効果でよくなっていくことがありました。そういった中で先生方も協力の姿勢ができてくると感じています。

平岩:放課後活動を学校でやるというのは苦労の連続で、本当に聞いていただきたい話が沢山あって、教頭先生が変わった瞬間に、とかいっぱいあるのですが(笑)。私たちも学校との協働の良さを大きく3つ挙げています。

①学校に通いづらくなった子のセーフティネット
②学校と地域の協働サポート
学校の先生が地域との協働まで全てデザインするのは大変だし無理がある。放課後を入り口にして、それをそのまま学校の方に押し上げていくのが良いのではと思います。
③親子の関係人口を増やす
たくさん悩まれている親御さんが多いなと感じています。相談窓口が増え、味方を増やすことで、親子関係のサポートや学校生活も一緒に支えることができます。

とはいえ、現場がいくら頑張っても動きにくいので、そのためにはやっぱり市長さんや教育長さんがしっかり認識をして、トップとして引っ張ってくれることがすごく大事ですよね。

■最後にパネリストから

平岩:放課後の取り組みは総じてまちづくりにつながるということに改めて気づかせていただきました。これから全国のまちで子どもたちを大事にすることはもちろん、地域の人たち皆さんにメリットがあるような、そんな展開を私たちもお手伝いできたら嬉しいなあと思いました。

猿渡氏:鎌倉と楢葉町の2事例しか知らなくて、今日をキックオフに全国の人たちと連携して、それぞれの取り組みや、うちのまちはこういう特性あるよね、というのをネットワークできたら強いのではと思います。放課後という資源を皆で多様に捉えながらつながっていけると素敵ですよね。

松尾市長:かまくらっ子に関わってくれているみなさん、本当に悩みながら進めてくださっています。改めて地域の資源を探していくというところにスポットがあたり、こんないい所があったんだ、こんなにいい人がいたんだと、どんどん見える化されることで地域との接点が広がりますよね。これが最終的に地域の幸せにつながっていくのが大事なんですが、まずは子どもたちにとってこれからもっと魅力ある放課後の場づくりを鎌倉市としても全力で取り組んでいきたいとい思います。全国のいい事例も沢山聞きたいので、引き続きよろしくお願いします!

【団体での地域連携事例紹介】
私たちの団体でも、各拠点が根差す地域や企業の方と連携した活動を行ってきました。一例ですが、拠点での取り組みをご紹介したブログです。
https://npoafterschool.org/archives/blog/2022/08/36717/

【参加者の声】

▼参加者の感想
・放課後がゴールデンタイムであること、まちづくり(地域の力の復活)に繋がることが良く理解できました。地元のニーズをもっと調査してみます。有り難うございました。(町議会議員)

・日本中どこにでもある「学校」という資源を活かすことの可能性を感じました。(こども食堂関係者)

・非常に内容が密度濃いお話を伺えました。大きな理念と実証しつつある説得力、行動力に拍手を送りたいと思いました。ひずみをかかえたまま来てしまった分断されてきた現代への大きな挑戦。あらゆる世代のつながりの再構築の明かりと思えました。人が人としてつながる原点をきっかけは放課後というゴールデンタイム(実は大人の自身の仕事や人生としての放課後としても)に気づき、大切な子供を通して(子供がいない人もかつてみな子供だったことを通しても)波及し良い社会づくりとなっていけるように願っています。(無所属)

・鎌倉市市長・実際の企画運営担当者・代表理事のお三方の登壇は放課後の重要性を示していただき、とても説得力があると思いました。原発事故により一時期離散してしまった住民が再び地元に戻り、子どもたちの放課後の充実を核として、地域の高齢者がふるさとの文化活動などで協力的に力を出してくれている様子に、感銘を受けました。子どもたちと高齢者の分断ではなくよき交流が、双方だけでなく地域全体へ住みやすい空気を流してくれているように思いました。『放課後の充実』がヒトの体の心臓と例えるなら、身体の隅々までよい血液が流れ、手や足やそれぞれ身体の部位(学童・高齢者・若者・働き盛り世代・乳幼児・社会的弱者)が健全に動き出し、身体全体(地域全体=日本)が活性化されていくようなイメージを持ちました。(放課後事業関係者)

・楢葉町の放課後・地域協働、まちづくりの事例が興味深かったです。地域に出ていくむずかしさは課題だが、やっていきたいと強く思う様になりました。(放課後事業関係者)

【今後に向けて】

参加者の方から、「今回のような事例が全国にあると思います。こういうイベントを通じてそれが広く認知され、さらにほかのまちに広がっていく循環ができるといいと思います。」というご感想もいただきました。本当に、良い事例が広がって各地域ならではの魅力的な取り組みが増えていくと素敵ですよね。パネルディスカッションの中でも、全国の色々な取り組みを共有し合う「放課後まちづくりサミット」ができるといいね!という話が出ていたので、ぜひ実現に向けて検討していきます。

今回のシンポジウムは新しい切り口での試みでしたが、私たち自身も学びが多かったことと、皆さんとこの時間を共有できたことが何よりうれしく、少しでも一歩踏み出すヒントや、新しい可能性を感じていただく一助になれば幸いです。
今後も実践や各地域の魅力的な事例研究を通じて、全国の放課後×まちづくりの可能性について探求していけたらと考えていますので、引き続きよろしくお願いします!

文・事業開発チーム/入山
写真・コミュニケーションデザインチーム/太田


本研修は、日本財団様の助成により開催いたしました。

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