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【ご報告】前編:第3回放課後勉強会「子どもをまんなかに!私たちで描くこれからの放課後」-子どもの育ちやそれを支える地域のこれからを考える

研修

放課後NPOアフタースクールは、日本財団様の支援の元、放課後の時間に子どもと関わる多様な支援者の方々を主な対象に、年間3回の放課後勉強会を開催しています。
合言葉は「子どもをまんなかに!」。今年度最後となる第3回目の今回は、初の分科会形式にて行いました。各地で活躍する実践者の方々をお招きし、参加者の皆様が現場や活動でお役立ていただける内容を目指しました。


※イラストは第1回に登壇くださった きしもとたかひろさん の描き下ろしです

▼第3回目のご案内情報はこちら
https://npoafterschool.org/archives/news/2023/01/38662/

▼これまでの研修のレポートはこちら
第1回目「放課後の心地よい居場所をつくる上で大事にしたい子どもへの向き合い方」
第2回目「子どもの発達や特性に応じた関わり方・場づくりを考える」

今回も各方面からご関心をお寄せいただき、日本全国から総勢500名以上の方々にお申し込みをいただきました。放課後の子どもの居場所(放課後児童クラブ、放課後子ども教室、児童館、放課後デイ、子ども食堂など)に携わる方、行政職員や企業の方、保護者の方など、多様な立場の皆様がオンライン上で集い、学び合う時間となりました。

【テーマ設定の背景】
年間を通して「もっと実践事例を聞きたい・話したい」というお声をいただいており、実践者の集まる場としての勉強会の位置づけを改めて考え、実践事例についてのセッションを主にした内容としました。
特に、子どもの自らの育ちを尊重するために支援者としてどう関わるのか、また支援者だけでなく多様な大人、子ども同士、社会全体でどのようにそれを支え得るのか。子どもをまんなかに広がる人の輪を想像しながら今回のテーマを設定していきました。


■オープニングトーク「子どもをまんなかに、社会で子どもを育てるために」
(放課後NPOアフタースクール 代表理事 平岩国泰)

当団体代表、平岩によるオープニングトークではじまった本勉強会。
平岩は「多様なセクターの方が集まっていただいたが、ここにいる私たちの共通項は“子ども”。『こどもまんなか』をもとに一緒に学び、つながり、それぞれの形で子どもたちのもとへ還元できれば。」と挨拶いたしました。

そして、いまの子どもたちや教育・子育てに関わるキーワードを4つ挙げました。
①少子化が加速(出生数が80万人割れ)
②学校がピンチ(小学校教員採用試験の倍率が過去最低)
③課題が小学生に(学童保育利用者数、不登校の児童数、いじめ件数、小学生の暴力行為発生件数が過去最多)
④子どもの声(4月にこども家庭庁が発足。政府も子どもの声を大切にする姿勢を明示)
その上で、私たちの大切にしている姿勢や想い、放課後でできることについての考えをお伝えし、本勉強会への期待を表しました。

【各分科会ダイジェスト】
さてここからは、3つのテーマの中から参加者それぞれが興味のある分野を選んで参加する、分科会形式へ移りました。すべての分科会に参加したいとの声も聞かれるほど、どのテーマも多くのご関心をお寄せいただき、各会での具体事例や実践者のリアルな声は、今後の実践のヒントになったとのご感想を多くいただいております。

■分科会1「子ども自らの育ちを支える」

前半:子どもの自律を支える放課後の場づくり(新渡戸文化アフタースクール 織畑研さん)
分科会1前半は、子どもの自律性を促す場づくりやスタッフ連携について、東京都内のアフタースクールに勤務する織畑さんにお話いただきました。

参加者の皆さんと一緒にいくつかの問いを考え、対話しながら進めていきます。例えば「問い:工作の材料を使いすぎてしまう。折り紙を一人一枚に制限しよう。」に対して賛成か反対かを、その理由と共に各自チャットに書き込んでいきます。
▼参加者の皆さんの意見
「一枚じゃ何もできない」「一枚だからこそ生まれる工夫もある」「児童に意見を聞きたい」「必要性をプレゼンさせる」

織畑さんが問いかけたのは「大人がいろいろ決めてしまっていませんか?」ということ。

スタッフ同士の意識合わせのために、小さなことからみんなで考え話し合う時間をつくることも一つの方法であると語りました。

織畑さん「『これって大人都合じゃない?』を少しずつ減らしていくと、子どもたちにも変化が。集団下校に置いていかれて号泣した子どもが7分前に集合するようになったり…。何より子どもたちが自分で過ごし方を決めているので、毎日楽しそう!」と笑顔で締めくくりました。

後半:子どもの自主性を引き出す活動づくり(神戸市立愛垂児童館 渡邉彩夏さん)
続いて、放課後STEAMプロジェクトでご一緒してきた愛垂児童館の渡邉さんが、3つの活動事例と、難しさも含めたそこでの気づき、子どもたちとの向き合い方をお話しくださいました。

①子ども会議☆あそびプロジェクト:長期休みに子どもたち自身で遊び・行事を考え、準備から実行までを行なう。これまでミニ運動会、お化け屋敷、お店屋さんごっこなどを開催。
②小学生によるお悩み相談ラジオ:児童館施設に来るお年寄りや子育て中のママさんなどからお悩みを募集。子どもたちが解決方法を真剣に考えてラジオで発信。
③すいすい☆YyouTtuber “放課後の7人”:放課後STEAMプロジェクトをきっかけに動画制作部を発足。子どもたちが企画から撮影・編集までを行なう。

渡邉さん「③は、4年生以上対象でメンバーを募集。児童館館長の『動画依頼受け付けたら?』との提案で、チラシや名刺を手作りしたりと、少しのきっかけでどんどん子どもたちが自主的に進めていった。低学年にとっては“放課後の7人”が憧れの存在に。」
最新の巨大スライムをつくる動画も上映いただき、メンバーが順番に名前を言って、グループの決めポーズをする様子はまさにYouTuberでした。

渡邉さん「子どもの可能性は無限大。やりたいことを最大限実現できるようにサポートし、緩めていける枠や縛りを職員同士で話し合う。自主的に動けるきっかけを渡せるように、日々試行錯誤。」と、悩みながらもとりあえず挑戦してみる姿勢の大切さを伝えてくださいました。

★クロスセッション
登壇者同士によるクロストークでは、「プログラムに子どもたちを集めるときの方法や声かけはどうしているか?」「新しいプログラムはどうやって生まれる?大人発?それとも子ども発?」が話題に上がり、後者は「きっかけをもち出すのは大人で、そこから子どもたちが一緒になって展開してくれる」「どんな企画もとりあえずやってみることを大切にしている」と各現場でのエピソードも交えながら、お話しくださいました。

■分科会2「多様な子どもたちの育ちに寄り添う」

前半:インクルーシブな場での子どもの育ちと大人のまなざし(一般社団法人 sukasuka-ippo 五本木愛さん)
分科会2の前半では、障がいの有無に関わらずどの子もその地域で生きていけることを目指して活動するsukasuka-ippoの五本木さんがご登壇。障がいのある子どもの親としての想い・願いからお話しくださいました。

五本木さん「障がいのある娘が幸せに生きていくために、母としてできることをすべてやってあげたいと思った。いちばんの不安は、親亡き後の子どものこと。『地域で育って生きていく環境を整えていく』ことを目標に、成長にあわせて必要になる情報、場所、サービスを自分たちの手で整えていった。」

運営する学童(sukasuka-kids)では、半数が障がいのある子どもが通っているそうです。
五本木さん「子どもの頃から障がい関係なく一緒に過ごせる場所をと開設。共に育ちあい、学び合っていける環境をつくっていきたい。この小さな積み重ねが障がいへの理解へつながっていくと思っている。

例えば、ある子は、発語のない子どもとのおもちゃの取り合いを通して、『ごめんね』をジェスチャーでする子もいることを初めて知る。大人が教えるのではない、子ども自身の経験を通した気づきが生まれる。定型発達の子どもたちが一緒に過ごしてどう感じ、どんな大人になっていくか。見守るスタッフには『障がいがある・ないで線引きしないこと』を伝えている。」

最後に「自分の暮らす地域にもいろんな子がいるということを、小さい頃から知っておいてほしい」という願いをお話しいただきました。

後半:子どもの好き・得意に寄り添う地域連携(南あわじ市教育委員会 天野弥生さん)
後半では、2019年度から協働している南あわじ市より、教育委員会の天野さんがご登壇。特技や趣味を活かして体験を提供してくれる地域の方、「まちの先生」についてお話しいただきました。

天野さん「応募くださったシンガーソングライターの方は、今度母校で校歌を歌ってくださる。その他、スタッフの親戚や保護者の方がまちの先生として来たり。実は、私の大学生の娘も百人一首の先生で応募している。」

具体的に3つの例を通して、まちの先生の活動の様子をご紹介いただきました。
➀ダンス:ある男の子の興味をきっかけにダンスの先生とつながる。やんちゃな子もダンスに行くと集中して楽しんでいる。上級生が下級生に教える流れができ始め、縦のつながりがダンス以外の時間でも。
②プログラミング:元気な男の子たちが、椅子に座って熱中。子どもの目線に合わせてくれ、信じてくださる先生で、ある男の子にドライバー1本を渡してパソコンの修理を任せたことも。
③将棋:淡路島出身の先生。小さい頃に将棋ができる場所が限られていたので、ぜひ子どもたちに将棋を!と参加。先生と近所の散髪屋さんとの1分対局では、大人が一生懸命取り組む様子とそれを子どもたちが囲むシーンが印象的だった。

天野さん「大切にしているのは、スタッフも一緒に楽しみながら体験する姿勢。教頭先生もフラダンスに参加してくださったり…。様々な体験を通して、地域には多様な大人がいることを知り、見え方が変わる。子どもの多様性にも気づいて、受け入れ、認められるようになる。」とお話くださいました。

※南あわじ市でのこれまで活動をまとめたブログはこちら

★クロスセッション
「放課後に対する想い」や「スタッフ間での共通理解を図る時間をどう設けているか?」についてトークが展開されました。前者では、五本木さん「子育てって家庭でできることには限りがあって、いかにいろんな人が関わっていけるか。地域の皆さんもそう。」/天野さん「学校ではなく、家庭でもない、新しい居場所ができたなと感じた。」とそれぞれ実感をもって話されていたのが印象的でした。

~~~後編へ続く~~~

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