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子どもたちの物語

お友達なんていらないよSくん / 1年生

お友達なんていらないよSくん / 1年生

S君は、入学した頃から、先生のことが大好きな男の子です。

1年生は、先生と遊びたがる子が多く、最初は先生の取り合いです。でも時間の経過とともに、上手に友達と遊ぶようになってきます。S君のことも、きっといずれ仲良しの友達ができるだろうと思っていました。

しかし、夏休みがやってきても、相変わらずS君は先生たちと遊ぶことを好んでいました。「先生、いつもありがとう」とお手紙をくれたりするような、心優しいS君。それなのに、なかなか友達と遊ぼうとしないのです。時々誰かに誘われて遊ぶことはありましたが、自分から誘うことはありませんでした。

S君は、少しずつイライラすることも多くなってきました。嫌なことがあると、周りの子のせいにする様子も見られたので、ある時、尋ねてみました。

「そんなことしたら、他の子がS君と遊びたくないって思ってしまうかもしれないよ?いいの?」

するとS君はきっぱりと、「お友達なんて、いらないよ。」と答えました。
「お友達がいなくても、先生やパパ、ママと遊ぶからいいんだよ」と言ったのです。

S君に友達のいる楽しさを知ってほしい。スタッフみんなでそう思っていました。

2年生の夏も終わろうとした頃、S君は突然に一人である行動を開始しました。大人数で大規模おにごっこをするために、S君はせっせと仲間を集め始めたのです。

「ねえ、一緒にやろうよ。」「○○さんは、この係をやってね。」
気づけば、参加者のリストは名前でいっぱいになっていました。

「お友達なんて、いらないよ」とあの日言っていたS君は、今、友達をたくさん集めています。冬休みに、一緒に遊ぶために。

最近また「お友達なんて、いらないよ。」と話している声が聞こえました。

そうか、S君はまだ認識していないのかもしれません。「友達」は、いつの間にか周りにいて、一緒に遊んだり笑ったりできる存在だということに。きっと、それに気づくまでもう少し。ゆっくりゆっくり見守っていこうと思います。

子どもたちの物語

私たちのアイドルGくん / 5年生

私たちのアイドルGくん / 5年生

支援学級から毎日来てくれる5年生のG君。ダウン症候群を持った子ですが、ひざ関節にも障害があり、車椅子に乗って生活しています。

2年前、首の骨の手術をした時には自力での移動も難しかったのですが、克服し今ではハイハイで自由に動けるようになりました。

G君は根っからの頑張り屋さんです。車椅子に乗りながらも自分でできることはみんなと同じように、何でも自分でやります。車椅子の乗り降りも、遊んだ後の片付けも、お手伝いしようとすると強く拒みます。少しずつできることが増えた喜びを阻害されたくないのだと思います。

G君はみんなの人気者です。アフタースクールにやってくると、まずは大好きな「千と千尋の神隠し」の絵を描きます。2年間ずっと変わらず描き続けていて、どんどん上手になり、芸術的なセンスを発揮。みんなの関心を集めています。

時々、G君に抱きつく子もいて、ちょっと迷惑そうな表情をするのですが、誰もいなくなると「さみしいよ〜」と言ってみんなの笑いをとります。

みんながG君に親切です。移動する時は道をあけ、どうしても届かないものをちゃんと取ってくれます。避難訓練では、車椅子での避難の補助を買って出てくれた子もいました。

今年の七夕のお願いは、「あるけるようになりますように」でした。
卒業までに叶ってほしい。みんなで願っています。

こんなに優しい気持ちにしてくれるG君と仲間たちに深く感謝を込めて。

子どもたちの物語

成長は、三歩進んで、二歩下がるAちゃん / 2年生

成長は、三歩進んで、二歩下がるAちゃん / 2年生

お友達や周りの人にうまく自分の気持ちが伝わらず、もやもやを抱えてしまうことは子どもたちにとってよくあることです。ご家庭と学校の間にあるアフタースクールでは、毎日心に積み重なったちりやほこりが満タンになって噴き出してしまうこともしばしばです。

ある日「一緒に遊んでいたお友達の行動が嫌だった」という訴えから、突然泣き出したAちゃん。以前もAちゃんは同様のことがあり、その時は落ち着かせてあげるのに少し時間がかかってしまいました。今回も前回同様。「私の話を最後まで聞いてくれない!」と訴えるAちゃん。

私はその時初めて理解しました。

Aちゃんはお友達に謝ってもらいたいわけではなく、ただただ自分のこのもやもやした感情を受け止めてほしかったのです。

きっかけはお友達とのささいな一件ですが、Aちゃんはその他にも日々の積もり積もったものを出したかったのではないかと思いました。きっと「思い切り泣きたいデー」だったのでしょう。

お迎えに来たお母さんに「前回より泣いている時間が短くなりました。」と報告すると、笑って「ありがとうございます」と言ってくださいました。

Aちゃんにとって、なんとも言えない感情をうまく出していくことはまだ難しいようです。

でも、水道の周りの壁が水しぶきで濡れていた時、それを教えてくれて雑巾で拭いてくれたこと。下の学年の子が、Aちゃんの作っていたカードの端を間違えて切り落としてしまった時、怒りもせず反対側も同じように切り落として「これならバランス良いよね」と言ったこと。

私たちは知っています、Aちゃんが日々成長していることを。

成長の速度は人それぞれです。子どもたち一人ひとりの今に寄り添う、そんなアフタースクールでありたいと思います。