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【ご報告】9/7(水)開催 企業×NPOフォーラム「社会課題に企業とNPOはどう挑戦するか」

9月7日(水)、ソニーグループ株式会社(以下、ソニー)との共催で、企業×NPOフォーラム「社会課題に企業とNPOはどう挑戦するか〜体験を通じた教育格差への取り組み〜」をオンライン開催しました。

ソニーは、国内の教育格差縮小に向けた取り組みとして「感動体験プログラム」を実施し、放課後NPOも協働しています。このほど、2021年度の「感動体験プログラム」(日本財団との協働長期プログラム:1拠点3プログラム、単発プログラム:45拠点9プログラム)を対象に、参加者にどのような変化をもたらしたか検証する目的で、同プログラムの2021年度社会的インパクト評価結果が公表されました。今回のフォーラムでは、この評価結果のご報告と、パートナー財団である日本財団、評価機関であるソーシャルバリュージャパンを交えた、多様な視点での意見交換を行いました。(評価結果サマリー版はこちら、プレスリリースはこちら)。今回のフォーラムは、この評価結果を参加者の皆様にご報告するとともに、プログラムにおいて連携をしている日本財団と、ソーシャルバリュージャパンを交えた、多様な視点での意見交換を行いました。

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【フォーラムダイジェスト】
講演① 企業NPO、財団、 コレクティブインパクトによる教育格差縮小への取り組み
ソニーグループ株式会社 サステナビリティ推進部 CSRグループ シニアマネジャー 
森悠介さん

森さんいま、日本では子どもの貧困、教育格差が広がっていると言われています。また、基礎学力を身に着ける学習機会だけでなく、創造性や好奇心を育むための体験機会の差も生まれています。「感動体験プログラム」では、ソニーのアセットを活用した体験機会の提供を通じて、日本国内の教育格差の縮小に貢献していくことができるのではと考えています。「感動体験プログラム」の社会的インパクト評価にあたっては、ロジックモデルを策定し、インプット、アウトプットと、初期/中期/長期の時間軸でアウトカムを設定。それに基づいて、何を目指していくのかを関係者で相談して、プログラム内容を設計していきました。

「感動体験プログラム」は、2021年度からは従来の「単発プログラム」(拠点に1つのプログラムを実施)に加え、日本財団「子ども第三の居場所」事業と連携して、「長期プログラム」1つの拠点で同じ児童に対して、半年間のうちに複数のプログラムを実施)を開始。子どもたち向けだけでなく、運営の質的向上を目指した拠点スタッフ向けワークショップ「大人対話会」というプログラムも含まれています。長期プログラムは、ソニー、日本財団、ソーシャルバリュージャパン、放課後NPOアフタースクールの4つの組織が、社会課題解決という共通目的のため協働しています。2021年度から拠点で開催を始め、今年度はさらに2拠点での実施を予定しています。

森さん:長期プログラムの今後について、大きなステップとしては、1.モデルを構築して、2.それを普及して、3.教育格差の縮小に繋げたいと考えており、いまはステップ1の段階にいます。当然、社会課題解決というのは、ソニーだけ、4つの組織だけで出来るものではないと理解しています。そのためには、様々なステークホルダーが協働して社会課題に取り組むコレクティブインパクトという考え方が非常に重要だと感じています。「感動体験プログラム」は昨年までに6,000名以上の子どもたちが参加し、成果は感じていますが、やはり社会課題を解決する、全国の子どもたちにリーチするというのは1社では難しいと考えています。多くの方々にご賛同いただき、連携することで、コレクティブインパクトを創出し、教育格差の縮小、子どもの貧困の是正といった社会課題の解決に繋げていければと思っています。

(ソニーグループ株式会社当日スライドより)

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講演② 社会的インパクト評価の概要と感動体験プログラムの評価結果
特定非営利活動法人ソーシャルバリュージャパン代表理事
伊藤健さん

伊藤さんより、社会的インパクト評価の概要と、評価でどういった知見が得られたかをお話いただきました。今回の評価の対象は、2021年11月~2022年4月に実施したワークショップです。評価の手法として、ワークショップに参加する子どもたちと拠点の現場スタッフの方々に対する事前/事後の質問表調査とそのデータの統計的分析、放課後現場へのアンケートやインタビューによる定性分析を実施しました。2021年度は新たに長期のプログラムを実施し、単発のプログラムと長期プログラムとでどのような違いがあるのか調査ができました。また単発のプログラムでは、ワークショップの種類(ワークショップの種類についてはこちら)や実施環境の違いで、どのように子どもたちの変化があるのか、また、「大人対話会」で運営スタッフの方々にどのような変化があったかを調査・分析しました。

伊藤さん社会的インパクト評価を行う意義の一つには、実施の主体となっているステークホルダーの間で、事業がどのようなプロセスで、どのような成果をもたらしたかを、ある程度の根拠をもって理解できることだといえます。現場では日々、「子どもたちがこんなふうに目を輝かしている」、「こんな発言があった」、「こんな面白い制作物ができたよ」など、様々な実感がありますが、「教育格差縮小」を目指した活動においては、現場のストーリーだけでなく、事業の成果を一定の客観性を持って測り、そこから得られた知見を事業に反映し、改善していくことが重要となります。そして、参加している子どもたちからの声を聴く、あるいは放課後現場のスタッフの皆様がどのようなことを考え、お感じになられているかを十分に汲み取って、事業に反映していくことが重要だと考えています。

プロセスとしてはまず、ソーシャルバリュージャパンが、非認知能力の醸成 によって格差が縮小される可能性があるのか、既存の研究について調査しました。それに基づいて、プログラムが目指す成果を定義するロジックモデルを策定しました。そして、事業がどういった成果を目指すのか、関係者で議論・共有し、それに基づいて指標を設定しました。このような議論を通じて合意した目指す成果を測るために、児童やスタッフへの質問票を作成、データを収集・分析したという流れになります。質問票は子どもたち向けには全18問。想定する変化について質問に書き落としたかたちで、4段階で回答を収集し、コンピテンシー評価を行いました。コンピテンシーという言葉について、個人的な能力、資質が想起されると思いますが、本プログラムにおいては、仲間と協力する、学びあう、共有する力も、期待される評価として含んだ質問となっています。

伊藤さん:ここで事業に関わる皆様にとって重要なことは、議論のプロセスで、「このプログラムが一体何を目指すものなのか」、「どのような過程を経て実現されるのか」、「成果指標の在り方は」というところの共通認識を当事者間で得たことだろうと思います。コレクティブインパクトという概念は、異なるステークホルダーが共通の問題意識、あるいは手法に対する合意をもって、協力して事業を進めることで、事業の成果が最大化されるという考えです。そのためには、何を成果とするか、どのようにその成果を測るのか、それをどのように事業にフィードバックするのかを、関係者の合意をもって決めることの重要性をご理解いただけるかと思います。

調査結果については、長期プログラムは時系列で見て、コンピテンシーが緩やかに上がっていく変化が見られました。経験が積み重なることによって、様々なコンピテンシーが相互補完的に伸びていくのではないかと推察できます。また、初めての試みだった「大人対話会」も、スタッフの「学びあいサポート」と「具体的行動」が向上するとともに、対話会の価値は「活動のビジョン、思いの共有」や「スタッフ間の意識共有の場」となるという評価が得られました。単発プログラムは、おおむねポジティブな影響があっただけでなく、「どういったプログラムが、どういった環境下で有益に作用するのか?」といった、プログラムの特性が浮き彫りになってきました。また、短期と長期では、長期プログラムのほうがコンピテンシーの伸び率がやや高いという結果になりました。

2021年度 感動体験プログラム評価報告書(サマリー版)より)

伊藤さん:今後の提言としては、1.募集時の放課後現場とのコミュニケーションにおいて、「このプログラムは、このコンピテンシーが伸びることが期待されます」といったコミュニケーションを行うことで、期待するプログラムの現場のニーズと成果のマッチングが容易になるのではないかと考えます。また、2.プログラムの難易度や適性を明示することで、放課後現場がスムーズに選択できるようになるのではと考えます。最後に、3.現在少数の拠点で実施しているこのプログラムのインパクトを面で拡大するには、学校や行政との連携が必要なのではないかと議論が行われました。

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トークセッション
次に、「感動体験プログラム」長期プログラムにおいて連携、支援をいただいている日本財団 経営企画部広報部 子どもサポートチーム リーダーの野本圭介さんと、放課後NPOアフタースクールの正村絵理も交えたトークセッションが行われました。

Q:評価結果を受けて、どう感じていますか?
森さん:正直なところ、まずはほっとしました。子どもたちの変化を見てきましたが、改めて評価結果として出していただけると、意味があったのだなと感じました。長期間行うことへの意義を把握できたことは重要な学びだったと思います。

Q:現場の声は?
野本さん:参加した子どもたちからは、とにかく「楽しかった!」とコメントがありました。子どもたちが未知のことを知る、楽しむ、考える、学ぶ、複数人グループでディスカッションをしたり、大人に向けて発表をしたり。そういった一連のプロセスを遂行できたことは非常に良い経験になったのではないかと思います。また、ソニーさんと、日頃から体験活動を実施している放課後NPOアフタースクール、そして中間支援組織である日本財団、それぞれの強みを活かせたことがよかったのではないでしょうか。子どもの教育に対する取り組みは待ったなしの状態なので、こういった座組を今後ぜひ増やしていきたいです。

Q:日本財団の「子ども第三の居場所」での体験活動についても、ぜひ今後の展望をお聞かせください。
野本さん:日本財団では、「子ども第三の居場所」を今後500拠点くらいまで増やしていきたい(2022年9月7日時点で準備中含め197拠点)と考えていますが、中身の充実が重要ですので、今回のような体験プログラムを拡充していきたいと考えています。また、「大人対話会」を通じて、どういう居場所にしていくべきかなどについても改めて話し合うことができ、居場所を取り巻く大人へのアプローチの重要性も感じました。こういった活動を通じて、社会全体で子どもを育てるという機運、「みんながみんなを育てる社会を実現したい」という輪を広げていきたいです。コロナ禍で、子どもたちの体験活動が奪われていますが、体験活動の価値とはどういうものなのか?今回のような評価指標は重要であり、こういった評価を積み上げることで、体験活動の重要性を広く提言していけると思います

Q.難しかった点、苦労した点は?
正村さん:コロナの影響を受けたという難しさがありました。長期プログラムの実施期間は、当初5か月の予定でしたが、コロナの影響で実施拠点が閉所の時期があり、プログラム実施が延期になり、結果6か月となりました。プログラム実施の間に、機材を子どもたちに自由に使ってもらい、試行錯誤する期間を設けましたが、「一人の発見がほかの子どもの発見につながる」といった体験を提供することができませんでした。コンピテンシーとして、「他者との交流」などの指数が下がっているところがあり、それはこの影響があると感じます。

森さん:まだまだ道半ばで課題はたくさんあると感じています。議論しながら進めるので、パワーを使いながら、苦労しながら、でもやりがいもあると感じています。課題としては、アンケート実施に基づいて評価していたのですが、うまくアンケートが集まらないというのがあります。子どもにアンケートを書いてもらうので、アンケート回答が有効回答と認められないとか、連続したプログラムの一部を欠席した場合、アンケートをデータに含められないといった苦労がありました。また、母数の確保が難しく、定量的評価に加えて、定性評価も、もっとうまくインパクトを見せていければと思っています。

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当日は多数の企業のSDGs、自治体、子ども支援にかかわる団体の方がご参加くださいました。本当にありがとうございました!今回のフォーラムが、少しでも皆様の参考となり、より多くの方や組織が、次代を担う子どもたちの成長を支える取り組みに共感くださり、アクションを起こすきっかけになればと願っています。

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