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みんなでつくる子どもが主役のアフタースクール ~2020年2つのチャレンジ~

■2020年台東区谷中で新規アフタースクールを開校!
2020年12月、東京都台東区立谷中小学校の放課後。
子どもたちが学校のランチルームに設営された受付でチェックインをすると、宿題、工作、プログラミング、けん玉、プラレール、マンガ、それぞれ思い思いの放課後の時間がスタートします。

設立11年目となる私たち放課後NPOアフタースクールの実践を結集し、今年度4月に21校目として開校した谷中小学校のアフタースクールでも、日々子どもが主役の放課後づくりにチャレンジしています。


今でこそ日常となってきたこの風景ですが、コロナ禍の中で社会活動や価値観が大きく変化する中、学校の在り方や放課後の子どもたちの過ごし方に変化が求められ、試行錯誤の1年となりました。

小学校の中で1-6年生全ての在校生が放課後に無料で参加できるという形でスタートの予定でしたが、4-7月は数人の保育を必要とする家庭のみに制限をした受け入れとなりました。8月から徐々に制限を緩和、9-10月にかけてやっと当初から計画していた全校児童が自由に参加できる形の運営となり、約360人のうち55-78人が参加するようになりました。

今も一進一退の感染症対策は日常の予防を心掛けながら、子どもたちの活動の自由度はできるかぎり損なわないように、「子どもたちが好きな事ややりたいことであふれたゴールデンタイムな放課後の時間をつくる」ことを目指して、アフタースクールづくりを進めています。


私たちは、そんな放課後を実現するために、2019年の台東区からの委託が決まってから「どのような放課後の活動環境が子どもたちにとって幸せなのか」ということを深堀りして開校準備チームで考えてきました。
特に、学校内の活動ではあるものの、「学校の延長の活動」という捉え方ではなく、子どもたちが受付を済ますと、「放課後のスイッチがON」になり、自分たちで放課後の時間をつくりだしていけるような魅力的な場にする必要があると考えていました。

そのために、2つのことにチャレンジをしてきました。

  • 「地域の建築士さんの力を借りて制限のある環境中でも自由度の高い場を考える」
  • 「子どもたちが自分たちが選び、自分たちで決めて、放課後の時間をつくりだせる活動を実現する」

これまでのチャレンジを振り返りながら、放課後づくりに取り組む私たちの実践と願いを少しでも紹介できればと思います。

■チャレンジ1「地域のプロの力を借りて制限のある環境でも自由度の高い場を考える」
2019年秋ごろ、学校に放課後活動として入らせていただくことは決まっていたものの、学校内の「どんな場所で」「どんな活動を」実施するのかということはほとんど決まっていませんでした。いつも学校や関係者の方々と対話や調整を繰り返しながら活動を具体化していくのですが、みなさん初めてのことなので「放課後に学校内で子どもたちが自由に活動する」ということをお伝えすることはなかなか難しく、「まだどうなるのかよくわからないから」と、最初は「一番慎重な選択肢から活動を重ねて徐々に良くしていこう」というところに落ち着くのがスタート地点です。

まず、決まっていたこととしては、
「ランチルームを使える。ただし、学校の授業後。毎日設営と原状復帰が必要。」(授業や行事などとの兼ね合いで使えないこともある…)
ということでした。

私たちも各所で取り組んでいる放課後事業にはこの「学校の施設活用の壁」が常について回ります。子どもたちが安全で自由度高く放課後活動をするためには学校からの理解を得て、安定的に活動できる場所を確保することが必要です。
そのためには、「どんな目的で」「どのように」「いかに安全に」その場所をお借りするのかを具体的に提案することが必要になります。そのプロセスの中で対話し、活動への理解を深めていただきながら、学校の先生方に安心して施設を開放していただけるようにコミュニケーションをはかっています。

谷中小学校ランチルーム

ランチルームは学校の教育活動では「食事をする場所」、衛生面に配慮しながら「何をどこまでやって良いのか」ということも学校に説明し、活動に対して理解を得る必要がありました。

「子どもたちの活動環境は、寄り添う大人と同じくらい大切」と考え、谷中周辺で活動され、お子さんも谷中小に通われているご縁のあった一級建築士の猪狩典子(いがりのりこ)さんのお力を借りて、ランチルームスペースの放課後活用プランを提案していくことにしました。

設計協力をしてくださった猪狩さん

私たちの考えた環境づくりのポイントは、「可動性」(学校状況や子どもたちの興味関心に合わせて柔軟に設営できること)「収納力」(子どもたちの荷物や様々な活動のアイテムを収納しレイアウトできること)でした。

また、子どもたちがチェックインしてから身支度をして、宿題や遊び、プログラムに参加していくまでの動きを洗い出し、採寸や動線のシミュレーションなどもしました。考えていくと、読書や宿題など静かに過ごしたり、リラックスして過ごせるスペースなど大人が意図をもって環境を設定しておく必要があることが改めて見えてきました。

そんな、放課後スタッフの熱弁と意図を猪狩さんが汲み取って図面に起こし、模型まで製作をしてくださいました!



当初の案では、「スタジオゾーン」(学習や工作など)と「リラックスゾーン」(ブロックやゲーム、ゴロゴロしたりも)の大きく室内を2つのゾーンに分け設計をしていました。

ランドセルラックの棚はキャスターで校内の同じフロアであれば柔軟に移動ができ、豊富な収納力の棚は全てぬくもりある同じ色調の木材で統一。部屋に死角が生まれにくいよう子どもの目線くらいの高さに揃えられ、また受付では細かい道具の収納性やスタッフの使い勝手を考えた専用デスクまで考えてくださり、大人も嬉しさ満点でした。

「最初は放課後でどんな活動をしようとしているのかよくわからなかったのですが、スタッフ方々の話を聞くうちに面白そう!と思い仲間に入れてもらいました」と当時を振り返ってくださった猪狩さん。
猪狩さんは「(ご自身の設計が)手から離れたら、我が子が巣立っていくように使い手がその場を育てていってくれるように」という願いをもって日頃設計に取り組まれているのだそうです。


猪狩さんの設計を元に家具を制作してくださったのは、こちらも谷中小にお子さんが通われている家具職人の田崎史明(たさきふみあき)さん。
田崎さんの工房は学校のすぐそばにあって、地域の子どもたちが放課後にふらりと立ち寄る憩いの場でもあります。限られた予算の中で強度のある木材の選定など安全に最大限配慮して制作してくださいました。

家具製作をしてくださった田崎さん

2020年3月、完成した家具を田崎さんとスタッフで協力して学校に運び込みました。
家具が全て揃ったのは3月末のこと、図面を元に試しの設営をし、広いだけだった空間に放課後の息吹が吹き込まれたように感じました。


とはいえ、まだ細かな物品はまだまだ整備されていない状況。そして実際に谷中小の子どもたちとも会ったことがない状況で、少しずつこの場をどう生かしていくのか、ということを考え、試行錯誤が始まりました。

▼製作の裏側に迫った、建築士/猪狩さん、家具職人/田崎さんへのインタビュー映像はこちら

【室内環境PJ】子どもと成長する空間を未来へ from 放課後NPOアフタースクール on Vimeo.


■チャレンジ2「子どもたちが自分たちで選び、自分たちで決めて、放課後の時間をつくりだせる活動を実現する」
4月、緊急事態宣言が出され子どもたちを心待ちにしていた家具たち(私たちも…)はまだ日の目を見ることなく部屋の隅で待っていました。
その間、私たちスタッフで「子どもたちが自分なりの放課後の時間を過ごせるために、どんな環境づくりをしたら良いのか」ということを日々議論していました。

まず考えたのは、「子どもたちが可能な限り自由に選択できるということ。またそれが細かい説明をしなくても分かりやすく、自分たちで過ごし方を決めていくことができるような環境であること」でした。
子どもたちに「自由にやっていいよ」といっても抽象的すぎて分かりづらく、スタートラインに具体的な選択肢があって子どもたちが「選ぶことで、自由を感じられる」と考えたからです。

そのために、3台作ってもらった資材ラックにそれぞれテーマを設けて収納するようにしました。

1つ目は「工作ラック」。段ボールや空き箱、プラスチックのケース、端切れの布など生活の中で出てくる廃材をできるかぎり多く収納し、いろいろな素材で好きなように工作、ものづくりに取り組めるように考えました。

2つ目は「手芸ラック」。ここには毛糸やゴム編みなど手芸の材料や作り方の本、必要な道具を収納して作品作りを誰でもいつでも楽しめるように考えました。ペンやハサミ、ノリなどの道具もこのラックに集約して管理し、出し入れは子どもたちが自由にできるようにしようと決めました。

3つ目は、「まなびラック」。子どもたちの遊びと学びがつながるような環境づくりにしようと、パソコン機器やプロジェクター、プリンターを収納し、学習プリントやぬりえを多数収納したラックにし、子どもたちの興味関心に合わせて、デジタル機材を活用した活動展開ができるようなセッティングを目指しました。

そして、これらのラックを設置するゾーンを当初の設計で考えていた「スタジオゾーン」「リラックスゾーン」に加えて、「谷中ラボ」と名付け、子どもたちの自由創作の「ラボゾーン」とすることにしました。
その他にも、各種本やマンガ、遊具・ボードゲームも一通り取り揃えていますが、このような環境づくりが拠点運営においてキーになると考えて注力していきました。

5-7月は少人数の参加だったので、子どもたちがどんな風に材料を手に取って工作するのか、どんなセッティングだと大人が管理しすぎずにタブレットを使わせてあげられるのかなど細かに検証しながら環境をつくっていくことができました。
試行錯誤の中で使い方や約束を一つ一つ大人が決め子どもたちに教え、浸透させることに無理があると思い、私たちはそれを止める代わりに放課後で大事にしたい3つのキーワードを考え、子どもに伝えることにしました。

「放課後で大事にしたいことは、『えらぶ・きめる・つくる』。自分でやりたいことを選んで、やり方も友達と一緒に決めたりして、自分たちで放課後の時間をつくっていってほしいなと思います」

この話は私たちの想像以上に子どもにストレートに伝わったようで、大人からの指示がなくてもその場の中でできることを自分たちで考え、アクションしてくれるようになりました。また、経験の少ないスタッフも子どもたちから相談ごとをされた時に「自分たちで決めていいよ」、「自由に使っていいよ」と声をかけやすくなりました。

最初のうちは、1日で材料を使い果たしてしまう、順番待ちでもめる、ということもありましたが、「材料は使い終わったらなくなるよね~。今日はもうできないねえ。次はどうする?」と当たり前のことなのですが、対話や気付きを重ねていくことで使い方や量など工夫してくれる子も出てきます。
大人が先に答えを出し、ルールで決めてしまうと子どもたちのこういった気付きや育ちの機会も減ってしまいます。散らかりすぎてしまって困る日もあるのですが、そういう時は大人が声をかけて環境を整えるなど大人も日々トライ&エラーで取り組んでいます。

こうした環境を子どもたちが喜んでくれ、「折り紙の枚数に制限ないの!?」「放課後って自由だから楽しい~」と嬉しい言葉をかけてくれるようになりました。また学校の中で噂を広めて誘い合ってくれるようになり、8月の夏休みや9月の新学期になると子どもたちの参加も増えてきました。


通常5-6人のスタッフで運営をしているのですが、当初は50-60人を想定していたところ、8月になると70人を越える子が来る日も出てきました。

夏休み明けからは念願だった"毎日プログラミングに没頭できる環境"も整えることができ、初めてプログラミングにチャレンジした子たちも12月には自分でプログラミングして作品を動かし、動画撮影をして、ウェブにアップするというところまで自分たちでできるようになりました。

編み物が大好きな女の子たちは自分たちで作り方を調べて髪飾りをつくったり、友達同士で作り方を教え合ったり、大人主導ではなく子どもたち発で活動が生まれ、学び合い遊び合う場面がたくさん生まれています。

2020年のチャレンジを通して、私たちは子どもたちが自由を感じられるための条件として「多様な選択肢があること」「自己決定できること」が必要で、そのサポート役として大人が寄り添っていく中で、「自分たちなりの放課後の時間をつくりだしていける」ということを感じています。

そのために活動場所となる学校の理解が必要となるのですが、活動している子どもたちの姿を折に触れて先生方に見ていただく機会などもつくり、徐々に学校の理解も深まり、施設の使い方や場所も融通をきかせてくれるようになると思っています。
まだまだ改善点も多くあり、子どもたちの選択肢も十分とは言い切れないのですが、これからも子どもたちが「自由で楽しい」と感じられるような環境づくりに引き続きチャレンジしていきたいと思っています。


■2021年、次は「モノとコト」の環境と「ヒト」の環境をセットで
2回目の緊急事態宣言が発令され、放課後の時間の緊張感も再び高まってきました。
細やかな感染症対策が求められ、活動にも一部制限のかかる中、子どもたちの過ごす環境づくりから変えていけることは多くあると考えています。

2020年から取り組んできた家具や素材といった「モノ」の環境整備を通して、子どもたちがやりたい「コト」の選択肢が増えてきました。この2つのチャレンジで整ってきた環境をより良くしていきながら、そこに「ヒト」の環境をより整えていきたいと思っています。

例えば、12月から地域の囲碁の先生が子どもたちがボードゲームで遊んでいるところに月に2回ほど遊びに来てくれるようになりました。他の遊びで遊んでいる子も、囲碁がやりたくなったらその先生と対局するし、自分から参加していけるような環境をつくり始めています。

プログラミングも、毎日各種ツールを出して子どもたちが遊べるようにしているのですが、そこにプログラミングの先生に遊びに来てもらって子どもたちと一緒に遊んでもらう。私たちスタッフも得意なことや好きな事を生かして子どもに関わり、場をつくっていけたらいいなと思っています。

子どもたち自身の「やりたい」をスタートラインに大人が寄り添ったり、世界を広げていったりしてあげられるような「ヒト」の環境を次の谷中ラボのステップとして設計をしていけたらとも思います。

感染症対策で制約は多く試行錯誤に終わりはないですが、2021年も子どもたちを真ん中に置き、大人が協力して育ちの環境をつくっていくようなゴールデンタイムの放課後づくりに取り組んでまいります。

文:渡部 岳(谷中小学校放課後子供教室責任者)

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