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【レポート】「こどもまんなかでつなぐ学校と放課後」実現に向けて、いま地域と自治体ができることとは?(後編)

11月20日「世界こどもの日」に寄せ、放課後NPOアフタースクールでは子どもたちの幸せについて考える機会として「こどもまんなかでつなぐ学校と放課後」と題し、行政の方や有識者、実践者の方々をお招きし、オンラインフォーラムを開催しました。第一部につづき、第二部の様子をお届けします。

【第二部】

①三鷹市「学校3部制」構想〜地域の共有地としての学校活用、地域人財とともに行う教育~(東京都三鷹市教育委員会教育長 貝ノ瀨 滋氏)

三鷹市教育委員会教育長の貝ノ瀨滋氏からは、「学校は誰のものか?」を改めて捉え直し、学校を多様な機能を持つ「地域の共有地(コモンズ)」として活用する「学校3部制」の取り組みについてご紹介いただきました。

貝ノ瀨氏:三鷹市では20年近く、コミュニティスクールを基盤とした小中一貫教育というコンセプトで教育改革を進めてきています。学校づくりにおいては、市民の皆さんや保護者の皆さんに力を尽くしていただいてきました。

三鷹市の「コミュニティ・スクール」
市内全ての小・中学校を一貫教育校(学園)としてそれぞれの学園に教育委員会が任命する保護者代表や地域の人々から成る学校運営協議会を設置し、様々な地域人財が一定の権限と責任をもって学校運営について協議と支援をとおして参画する取り組み。

そういった実践の中で、放課後における子どもたちの居場所についての課題も出てきました。そこでコミュニティスクールの発展系として、学校を地域の共有地(コモンズ)として考え直し、地域人財とともに活用していく取り組みとして「学校3部制」を進めています。

私が、常々地域や特に学校側の方に、問題提起していたのは「学校は誰のためのものですか」ということです。学校は、子どもたちのためだけじゃなくて、 教職員の働く場でもありますし、また、保護者のPTA活動の場でもあるし、 未就学児の保護者や子どものいない市民の皆さんも納税者としての立場から、「市民のための財産でもある」といえます。

つまり学校は、子どもたちの学校教育機能だけではなく、もっと多様な機能を持つべきではないか。具体的に言うと、福祉的な機能や防災的な機能、生涯学習的な機能などの様々な機能を持っていくべきではないかいうことで、学校は「地域の共有地(コモンズ)」である、と再定義をしました。

学校を使う時間帯を三つに分け、第1部は学校教育の場、第2部は放課後の場として、子どもたちが価値ある体験をできたり、静かに過ごしたい子はそうできる場所を用意しています。第3部(夜間、休日)は、大人のための学びの場として市民向けのイベントを実施しています。第2部、第3部について学校の先生方はノータッチで、教育委員会と市の責任において居場所を 確保しています。

第2部での様々な活動を通して、学校教育だけでは十分培われない子どもたちの非認知能力 、例えば、自己肯定感や創造力、向上心、自制心や忍耐力などといった人間力、社会力を培っていければと考えています。第3部は市民の学び場、活動の場ということで、生涯学習の場となります。また、同時に福祉的な機能として、いわゆる子ども食堂のような朝食提供の取り組みでも使ってもらっています。

学校を活用する中で懸念される事故やトラブルに対しては、市の責任として保険に入ったり、先生方の私物をしまうロッカーを設置するなどの対応を一部では行っています。現在、さまざまなモデル事業を行いながら取り組みを推進しています。


②安平町早来学園 「いつの間にか出会う、つながる」 学校を中心に町ぐるみでつくる子どもの居場所(北海道安平町地域プロジェクトマネージャー 北海道安平町教育委員会 子育て・教育総合専門員 井内 聖氏)​

安平町の井内氏からは、同町の様々な子どもの居場所づくりや、2023年4月に開校した、小中一貫の義務教育学校「早来学園」の「学校と地域を分けない」取り組みについてお話しいただきました。

井内氏:安平町は深刻な人口減少と少子化に見舞われています。 このままだと町の存続が非常に厳しい。そこで、安平町は「子育てと教育」をまちづくりの柱にしました。町の総合計画のトップに子育て・教育を持ってきて、様々な施策を行っていこうという覚悟を決めました。

改めて子どもの居場所について整理すると、0歳から小学校6年生まで、保育園、学校、放課後児童クラブ、児童館などいろいろなところに子どもがいます。それぞれの場所に子どもを見守るプレイヤーがいますが、プレイヤーが多いということは、多様な経験ができるメリットである一方で、一貫性と系統性に欠けるというところもあります。そこで、安平町は学校よりも取り組みやすい放課後と幼児教育の面で、公立の子ども園を全て民営化しました。

そして、その法人に町の子育て支援センター、放課後児童クラブと児童館の運営を指定管理で任せました。そうなるとプレイヤーが2者(小学校と、それ以外の居場所を担う法人)になります。学校以外の子どもに関わるすべての機能を民営化して1つの法人に任せたということです。

委託したのは民間法人ですので、多様な人材がいます。職員には、スポーツのNPOの事務局をやっている20代、元国立公園のレンジャー、アートデザイナー、競走馬の厩務員(きゅうむいん)、外国人講師や、元ラーメン屋の副店長という方までいます。

そういった方々がいることで、放課後のプログラムが多様になっていきます。しかも、そこが幼児期から学童期まで同じ方針でいきますから、幼児期の学びを踏まえて、学童期の放課後活動と体験ができるようになります。さらに子ども園はバスを保有していますので、 このバスを使ってどんどん地域に出ていくこともできます。

一方で、放課後を自宅で過ごしている子どもたちに対しては、町が無償の塾を設置しました。面白いのが「教えない放課後教室」ということで、公営塾ですが、勉強(教科学習)は一切教えません。まずは遊んで、そこからワクワクして挑戦していく。安平町ならではの探究型の授業を提供し、学びをベースとした公営塾になっています。

このように放課後がどんどん変わっていく中で、後に小学校や中学校の方にも入っていきました。放課後スタッフが学習指導員として、1時間目から5時間目まで、 授業の中に入っていったり、公営塾が統合的な学習を共同実践しています。 そうして、徐々に多様な人材が学校の教育活動をサポートするようになっていきました。

して、この活動と並行して行っていったのが学校建設です。安平町は、数年前の地震で被災した町なので、学校を建て替えなければいけなくなりました。チームラボというデジタルアートなどに関わっている企業にも協力も得て、今までにない学校「早来学園」がこの4月に開校しました。

この学校の考え方は、「地域と学校を分けない」というものです。時間でも分けなければ、場所でも分けません。

例えば、日中の図書室におじいちゃんやおばあちゃんがいて、イベントに参加している0歳児もいて、そこに子どもたちは本を借りに来ています。また、隣は家庭科室ですが子育て支援のお母さん方が使っています。学校は全面ガラス張りで、地域の方も全て見えているという状況です。

放課後には栄養士の資格を持つ職員が家庭科室で調理のプログラムをやっていますが、そこに参加している子どもたちに加えて、校長先生と小学校の先生もいます。ほかにも、学校の英語の先生が放課後に活動を一緒にやったり、子ども園のフィリピンの方がハロウィンのプログラムを学校でやったり、子ども園のアートデザイナーが、 学校を使ってアートのプログラムをやっていたりします。

このように子どもたちと活動するプレイヤーがたくさんいることで、多様性が生まれています。ただ、そのプレイヤーの多さが運営者の多さになると共同連携がやりづらくなってしまうので、その系統性という意味では、運営者は少ない方がいいと考えます。

「多様性と系統性を持って学びと育ちをデザインしていく」というのが安平町の考え方で、 この考え方のベースにあるのが「分けない、繋げる」という生涯学習の構造モデルです。年代で分けるのではなく、全ての年代が繋がっているという生涯学習構造を安平町では目指していて、それを、学校を核としてやっていこうとしています。

公立学校をすぐに変えるのはなかなか難しいと思いますが、放課後にも子どもはいますし、放課後は変えられます。じゃあ誰が変えるのかといったときに、 地域と学校の協働が子どもを育てる、子どもが育つ町を作るのではないかと考え、取り組んでいます。


③第二部パネルトーク「三鷹市・安平町に聞く ヒト・モノ・カネをどう確保する?」

パネルトークでは、三鷹市と安平町の取り組みに関してさらに深掘りし、実際に人材、場所、資金をどのように確保しているのかについて貝ノ瀨氏、井内氏にうかがいました。

Q.人材はどのように確保しているのでしょうか。
井内氏:安平町は人口が約7,000人しかいないので、なかなか地域内で連携できる人を見つけるのが難しいです。となると、外から来てもらうしかないので町外で「何かやりたいことがある人」を全力で探していきます。

やりたいことがある人がいたなら、それを安平町でやってもらう受け皿を町と一緒になって、もしくは民間事業者と一緒になってつくっていくというのがうちの考え方ですね。やはり移住前提でないとなかなか難しいので、全国から「やりたいことがある人」を見つけていきます。若い人にとっては経験が積めること、「この街に来たら、自分のキャリアの中で何が高められるのかな」というところが魅力になっているようです。

貝ノ瀨氏: 三鷹市は学校と地域の方が共に学校運営に責任を持って関わってきた中で、放課後についても学校運営協議会の委員が関与しています。そのつながりの中で、地域の方たちにいろいろと声を掛けて放課後の取り組みにご協力いただける方を募っています。人の面でもお金の面でも、市や教育委員会が援助しながら動かしていく仕組みになっています。

平岩:地域の人が関わる仕組みができているということですね。教育に関わりたい人は少なからずいるという印象もありますし、しっかりした環境があれば、 人材確保を諦めることはないんじゃないかなと思いました。

Q.場所の問題について、どうすれば学校を活用できるのでしょうか。
貝ノ瀨氏:三鷹市では約20年前から「開かれた学校づくり」という方針で取り組みをしてきた中で、地域の方を信頼して、先生方と一緒に子どもを育てるという機運が土台にありました。「学校はみんなの財産」ということは学校側にもわかっていただいていると思います。ただ、学校を使ったときには後始末をきちんとするとか、物がなくならないようにちゃんとお互いに気をつけるとか、そういった面での配慮を十分にすることが必要かと思います。

それからもう1つは、社会教育法で学校教育に支障のない限りは、学校は社会教育に供する旨の条文があります。では、学校教育に支障がないかは誰が判断するのかといと、実は学校長ではなく教育委員会なんですよ。その辺りもやはりしっかりと理解してもらう必要があるかと思います。

平岩 :本当ですね。法律の方では、むしろ学校を使いましょうという条文がありますので、こういった三鷹市の事例を日本中に伝えていきたいです。安平町では、みんなで学校を使うことによる問題事項や、それを乗り越えるための工夫はありますか。

井内氏:建物については児童生徒玄関と地域の利用の玄関を完全に分けました。地域の利用の玄関は、フリーで入ってこられます。地域開放されている最初のところが図書室なのですが、飲食も自由、走ってもいいし、ソファーもあるし、薪ストーブもあるし、みんなが使っていい場所になっています。

ただ、そこから学校の教室のエリアに行こうすると勝手に行けないようになっています。顔認証システムを入れていて、児童生徒は顔認証登録をしているのでフリーで行けるけれども、地域の方は勝手に教室へは行けません。

一方で、家庭科室や技術室や体育館などは全てスマホから利用のweb予約が可能になっています。予約は学校の授業中の時間帯でもできます。時間割で空いていれば、町民、町外の方関係なく利用が可能。年末年始を除いて、土日祝日含めて朝9時から夜9時まで開いています。

これが可能になったのは、最初の学校の設計段階から、ICTを活用するということ、地域開放を前提にした みんなの学校を作るというコンセプトがあったからです。

平岩 :ありがとうございます。私たちがアフタースクールを運営している学校でも、うまく切り分けをしながら既存の学校施設で同じようなことをやっているケースもありますので、そんな形でもできるんじゃないかなと思いました。

Q.財源や予算をどのように確保しているのでしょうか。
井内氏:安平町の場合は、人口減少が進む中で「子育てと教育」を1丁目1番地に持ってきたということで、 予算の確保は自治体がしっかりとやってくれています。ただ、お金が潤沢にある町ではないので、幼児教育のところに放課後部門もお願いをして、そしてうまく国の(予算の)メニューなどを使っていきながらやっていました。あとは地方創生のお金ですね。いろいろな総務省のプログラムがあるので、そこを使って財源を確保しています。

貝ノ瀨氏:学童保育に通う子どもたちからは一定の保育料をいただきながら、国の補助も活用しています。また、放課後子供教室は文科省の事業ですが、そちらも補助が出ています。ただ、そういった国や都の補助だけでは不十分ですので、自治体の方でやはり工面するということになります。ぜひ、こども家庭庁でも学童保育だけではなく、全児童への補助をしていただけるともっと広がりが出るのではないかと思っています。

全ての子どもが希望する形で過ごせたり活動に参加できたりするための取り組みは自治体単体でやるのではなく、まさに社会総ぐるみ、国ぐるみで進めるべきことだという風に思います。

平岩:本当にそうだと思います。そういう意味では、今回、学童の領域が厚生労働省からこども家庭庁の管轄になったというのもやはり大きな一歩だったかと思います。


④放課後の価値とは(放課後NPOアフタースクール代表理事 平岩国泰)

平岩:今回、私たちの団体でいろいろと子どもの声を聞いてみたのですが、総じて言うと「自由に遊びたい、自由に過ごしたい」というのが1番多い声でした。

私たちが放課後の価値の中で最上位に置いているのは、「自分で決められる」ということです。自分で決めて、時間割りのない放課後に何かに没頭したり、あるいは、みんなと同じでなくていい放課後にいろんなことをやっていたり…そういったところに価値があると考えています。

また、「ウェルビーイング(幸せ)」というキーワードが教育基本振興計画にも入ってきましたが「いろんな選択肢の中から自己決定できる」ということが決定要因として大きいと言われています。

放課後の質という面からも、「子どもたちが自分たちでいくつかの選択肢の中から選べる」ということが大事なポイントの1つになっていると認識しています。ぜひ、今回ご参加いただいている皆さんも「子どもたちが何かしら選べる要素があるか」ということを意識していただけると良いのではないでしょうか。

終わりに
放課後NPOアフタースクールは「放課後はゴールデンタイム」というビジョンを掲げています。しかし、私たちが行った小学生や保護者への調査(概要)では、友達と遊ぶ頻度が「週1回以下」と答えた小学生は70.9%、「放課後にもっと友達と遊びたい」と答えた小学生は76.2%にも上ることがわかりました。

放課後に思うように友達と遊べない理由としては「友達と予定が合わない(48.7%)」がトップです。「もっと友達と遊べるようになるには、どうなるといいか」には「友達と遊べる日が増える(39.1%)」、「遊び場が近所にできる(35.7%)」が上位にきていました。また、小学生と保護者へのインタビューで放課後に思うように遊べない理由を聞くと、 時間、仲間、空間の「3つの間」に課題があることが伺えました。

こういった現状に対して放課後NPOアフタースクールとしても真摯に向き合い、放課後をゴールデンタイムにするべく多様な方々と手を取り合い、これからも子どもたちのために様々な取り組みを進めてまいります。

平岩「子どもたちの幸せに貢献する放課後が日本中に増えるように、 我々も皆さんを支援したいと考えています。こども家庭庁を中心にメッセージをしっかり伝えて、そういった機運を高めるべく我々も頑張りますので、社会全体で“こどもまんなか”の居場所づくりができればと思います」

今回のフォーラムがご参加いただいた皆様にとって、子どもたちのための放課後づくりの一助になれば幸いです。ご参加いただいた皆様、ご登壇いただいた皆様、ありがとうございました。


参加者のご感想
・『こどもの声を聞く』という発想がなかったことにハッとしました。
・世の中では保育所も学童も親が働くための子どもの居場所、という感覚が強くなってきているけど、そのせいで子どもが後回しになっていることに気づきました。子ども第一でありたい、子どもが子どもらしく過ごせる時間を確保したい、改めてそういう場所を作りたいという気持ちが大きくなりました。地域の人たちと少しずつ子どもたちのためにできることをやっていきたいです。
・居場所とは場所だけでなく、そこにいる友達や時間、人間関係も居場所であるということの言葉が響きました。大人社会の制限がある中でだけど、子どもにとって居心地の良い環境を目指して、環境作りをしていきたい。
・地方の人口が1万人未満の自治体(安平町)でも、様々なアイデア・工夫でここまでの取り組みができるのだなと驚き、他の多くの自治体も参考にしてほしいと感じました。
・学校の活用が多岐にわたることが気づかされた。
・子どもの遊びの重要性、遊び環境の充実のための学校施設の活用方法についてもさらに情報収集し、発信していきたい。
・三鷹市の小学校をコモンズとして捉え直したお話しや、海外の校庭を遊び場としている事例などとても参考になりました。地域、学校、保護者の中で同じ問題意識を持っている方を見つけて繋がったり、子どもたちの意見を聴いたりしながら、現状にあった方法を地道に模索していきたい。
・こどもの意見を取り入れ、こどもを最優先に考えて学校と放課後を繋ぐことの大切さを学ぶことができました。今後本市の行政、教育委員会にも問いかけていきたいと思います。

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