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【放課後の価値:対談企画】第1弾「子どもたちの目を守るには放課後がぴったり⁉」平岡孝浩先生(筑波大学准教授)×代表平岩

私たちは、全国の放課後が誰にとっても安心・安全で、子どもたちがのびのびと過ごし、あらゆる可能性を持つ豊かな時間になることを目指して活動しています。そのためには、「放課後の価値」を社会に伝え続けていく必要があると考えています。

その「放課後の価値」を教育面のみならず、健康面や環境面などのあらゆる観点から見つめ、さまざまな声を世の中に発信しようと、研究者の方々との対談企画を実施!

今回は、筑波大学医学医療系眼科・准教授の平岡孝浩先生をお迎えし、代表平岩との対談を実施いたしました。

<平岡 孝浩先生(ひらおか たかひろ)のご紹介>
筑波大学医学部専門学群卒業。茨城西南医療センター病院眼科科長や筑波大学大学院人間総合科学研究科講師を経て、現在は筑波大学医学医療系眼科・准教授として眼科学を研究。書籍「クリニックではじめる 学童の近視抑制治療(文光堂)」を編集。

眼科と放課後というあまり馴染みのない組み合わせかもしれませんが、実は「子どもたちの目を放課後の時間で守ることができる」のです。気になる対談の内容をお伝えします。

■「近視」について知っていますか?
平岩:平岡先生の目のご研究や警鐘を鳴らされていることについて教えてください。

平岡先生:近視とは、近くのものははっきりと見える一方、遠くのものは見えにくい状態を指します。近視の度合いが強くなるほど、将来的に、日本の失明原因第1位の緑内障や、治療の手立てすらなく失明してしまう近視性黄斑症などの目の病気になるリスクが高まります。
今、この近視である人の割合が世界的にも増加傾向にあり、今後も右肩上がりとなるだろうと予測されています。日本では、近視である人の割合の疫学調査を実施してきませんでしたが、スマートフォンやタブレットなどのデジタル端末の普及も進む中で、今年度から日本の小中学生を対象に近視の状況の調査に乗り出しました。日本全体として、目の病気のことを軽く見てきたようにも思います。

平岩:子どもの視力も悪化が続いていますよね。

平岡先生:40年以上続けている調査では、日本の子どもたちの「裸眼視力1.0未満の割合」が2019年に小学生・中学生・高校生において過去最高となりました。小学生においては、その割合が40年で2倍にも増えています。

■子どもたちの目を守るためにできること
平岩:近視について証明されている研究はどんなものがありますか。

平岡先生:近視に関してわかっていることとして、次の5つがあります。
➀過度の近業(近くを長時間見ること)により進行
➁都市部で進行が早い
➂IQや学歴が高いと進行が早い
➃屋外活動は近視を抑制する
➄遺伝の影響が強い(両親が近視だと7~8倍の確率で子どもも近視に)

近視を減らす効果的な方法の一つとして➃の「屋外活動は近視を抑制する」という研究に注目しています。
中でも自分も衝撃を受けた研究があります。それは“2010年より「近視予防のために毎日2時間以上の屋外活動を促す」という政策プログラムを導入したところ、視力不良者の割合が明らかに減少傾向に転じた。”というものでした。

■放課後の時間、いいなと思った
平岩:ずばり!子どもたちは1日2時間の屋外活動をしましょうということですね。放課後だけで2時間取るのは難しいですが、通学や学校の体育の時間、行間休みなどで1時間、放課後で1時間だとちょうどいいですね。

平岡先生:そうですね。放課後がいいなと思ったのは、「外に出て太陽光を浴びましょう」だと紫外線の影響で皮膚がんのリスクが高くなるとか、日光を浴びることによる病気を心配される方もいる。木陰程度の照度でも近視の抑制を期待できるという研究結果がありますので、昼間のものすごい暑いときに出る必要はなくて、涼しくなって日が陰ってきた夕方の時間帯でも、近視の観点からいうとそれを抑制するには十分な光を浴びることができる。紫外線をある程度防ぎながら、光を浴びて近視を抑制するのには、放課後の時間がいいと思いました。

平岩:嬉しいですね。放課後の外遊びは、子どもの目にとっても最高ということですね。

平岡先生:放課後の時間に、教室や体育館で遊ぶだけではなく、屋外での活動もどんどん増やしていただければと思います。

■平岡先生から子どもたちやその周りの大人たちへのメッセージ
外で遊ぶことに加えて、目のためには、近くばかり見ないようにしましょう。バランスよく遠くも見ること。もちろん勉強も必要ですから、近くを見ることもしなくちゃならないし、これからの時代はタブレットなどのデジタル機器も使えなくてはならないので、それを全部やめろとは言いません。うまく付き合っていきましょう。30センチ以上を目安に距離を取ることと、通して1時間2時間やるのではなく、30分経ったら目をつむる、または遠くを見ることで目を休めましょう。

今回の対談を通して、「子どもたちが放課後の時間を活用して、屋外で遊ぶことで、近視を抑制することができる」という新たな視点での「放課後の価値」をみなさまにお伝えすることができました。放課後の時間に、外で楽しく遊んでいるだけで、近視の予防もできるとは嬉しいですね!これからの未来を生きていく子どもたちに、私たち大人に今できることを考えて過ごしていきたいです。
ご協力いただきました平岡先生、本当にありがとうございました!

文・事務局 コミュニケーションデザインチーム/太田

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