【レポート前編】放課後NPO・自治体フォーラム2025『事例をもとに考える|自治体のこども政策に活かす地域全体の居場所づくりフォーラム』
2026.02.27
イベント11月20日「世界こどもの日」に寄せ、NPOアフタースクールでは、11月19日(水)に『事例をもとに考える|自治体のこども政策に活かす地域全体の居場所づくりフォーラム』を開催しました。地方自治体職員、子どもの居場所運営者、子どもに関わる活動団体や地方議員など505組600名以上が登録・参加。こども家庭庁、文部科学省、自治体のご担当者を交えて、子どもの居場所づくりについての国の方針や自治体の好事例を紹介しつつ、放課後の質の向上について多方面から考える機会となりました。
イベントの詳細はこちら
https://npoafterschool.org/archives/news/2025/09/47001/

本フォーラムは、第1部「講演」と第2部「勉強会」の二部構成で開催されました。
第1部では、子どもの居場所づくりに関する国の方針や自治体の事例が紹介され、第2部では国・自治体の担当者による率直な意見交換が行われました。
本編は、イベントレポートの前編として第1部の様子をお届けします。
<レポート後編>
第1部の「講演」パートでは、こども家庭庁成育局成育環境課 安里賀奈子さん、福岡県北九州市 子ども家庭局こども若者成育課 武田典之さんが登壇。こども家庭庁が掲げる「こどもの居場所づくり」についての考え方や、自治体における具体的な取り組みが紹介されました。
さらに、放課後NPOアフタースクールの平岩より、子どもの居場所を考える上での放課後の重要性や課題についてお話し、学校施設活用に焦点を当てた第2部「勉強会」パートへとつながりました。
基調講演:「持続可能な居場所づくりをどう進めるか〜課題解決に向けた自治体政策を考える〜」
こども家庭庁成育局成育環境課 課長 安里賀奈子氏
基調講演では、こども家庭庁成育局成育環境課の安里さんから、「こどもまんなか社会」の実現に向けた居場所づくりの方針や、地域への期待、国の支援策について説明がありました。
「こどもまんなか」の考え方
冒頭では、こども家庭庁のスローガンである「こどもまんなか」について、「一人ひとりの意見を聴くこと」そして「その声をまんなかに置きアクションすること」の重要性が示されました。「こどもまんなか」の理念のベースには、『こども基本法』や世界196の国・地域が批准する『子どもの権利条約』があります。子ども・若者の意見を聴き、多様な活動への参画機会を確保した上で、その声をただ鵜呑みにするのではなく、子どもにとって最も良いことを考えて政策に反映していくことを基本の考え方としています。

こどもの居場所づくりの指針
こうした理念をもとに『こどもの居場所づくりに関する指針』が2023年12月に閣議決定され、こどもの居場所づくりが推進されています。

安里さん:
指針には、居場所は「大人が決めるもの」ではなく、「こども・若者本人が決めるもの」であることが明確に示されています。居場所をつくる大人と、こどもの過ごしたい居場所との間にあるギャップを認識した上で、こどもの声を聴きながら、こどもたちが「居たい」「行きたい」「やってみたい」と思える場所を増やしていきたいと考えています。

居場所が複数あることが自己肯定感に良い影響を与えるというデータもあり、多様な居場所を「ふやす」、こどもと「つなぐ」、こどもの声を聴きながら「みがく」、そして居場所づくりを地域全体で「ふりかえる」ことを基本的な視点としています。
多様な居場所づくりのための国による支援
児童館など、子どものための施設に限らず、図書館やショッピングセンターの一角、人と人の関係性も含め、ちょっとした工夫で多様な場所が居場所になりえます。そうした居場所づくりにおいては、「官民の連携と協働」が重要であり、行政だけでなく、「地域住民」「企業」「学校」とも連携して取り組むこと、その中で「市町村」には全体をコーディネートする役割が期待されています。
こども家庭庁では、地域全体で居場所づくりを進めるための「こどもの居場所づくりコーディネーター」機能を重視し、その配置を推進しています。あわせて、行政として提供している補助や支援策についても紹介がありました。
紹介された支援策:
・こどもの居場所づくりコーディネーター配置等支援事業について
https://www.cfa.go.jp/policies/ibasho/654d7f43
・こどもの居場所づくり支援体制強化事業について
https://www.cfa.go.jp/policies/ibasho/V28SVlai
・「放課後のこどもの居場所」を拡大するモデル事業の創設
https://www.cfa.go.jp/speech/49804eb9※黄川田大臣記者会見(令和7年11月18日)
・児童館などを活用した地域課題解決モデル事業(仮称)

安里さん:
こどもの居場所づくりを実践している人から「関わっている大人のほうが元気になる」という声をよく聞きます。子ども中心の居場所づくりを推進し、そこで交流が生まれることで、地域全体が元気になり、子どもだけでなく誰もが笑顔でいられる地域につながっていくのではないかと期待しています。
参考ページ
「こどもの居場所づくり」に関する情報発信
https://www.cfa.go.jp/policies/ibasho
福岡県北九州市 子ども家庭局こども若者成育課 係長 武田典之氏
続いて、北九州市子ども家庭局こども若者成育課の武田典之さんより、地域全体で居場所づくりに取り組む事例が紹介されました。
子どもの居場所づくりの基本視点
北九州市では、子どもの孤独や孤立といった問題を背景に、子どもが生きていく上で多様な居場所が不可欠であると考え、国の指針に沿った居場所づくりに取り組んでいます。
「こどもの声を聴き、こどもの視点に立ち、こどもとともにつくる居場所」と「官民の連携・協働」を基本的な視点とし、こども家庭庁が掲げる「ふやす」「つなぐ」「みがく」を意識した取り組みを進めています 。特に、「官民の連携・協働」については、若者の居場所に対する多様なニーズに応え、持続的な居場所づくりを進めるために、民間の創意工夫を活かし、官民の垣根を越えて選択肢を増やすことが重要だと考えています。
居場所づくりの具体的な取り組み

北九州市では、行政、民間それぞれが居場所づくりに取り組んでおり、市の取り組みの一例として、JR黒崎駅に隣接する官民複合施設内に開設した「ユースステーション」があります。中高生を中心に、学校帰りや休日に気軽に立ち寄れる場所として、学習や仲間との談話、ダンスやバンド活動、くつろぎの場など幅広く活用され、ゲーム機やモバイルバッテリーの貸し出しも行っています。

また、「放課後児童クラブ」では、 地域の要望を受け、2011年から希望者全員を受け入れる「全児童化」に取り組み、14年連続で待機児童ゼロを継続しています。長期休暇中の早朝からの運営や昼食の提供もスタートし、利用者に喜ばれています。昨年度から始まった「わいわい市民センター」では、市民センターのホールなど既存の地域資源を子どものスペースとして開放しています。北九州市は全国に先駆けて『こどもまんなかcity』を宣言しており、この取り組みは子どもたちの声をきっかけに実現した例になります。
民間の居場所づくりでは、賛同する企業からスペースの提供を受け、「こどもまちなかスペース」を2か所開設しています。高校生がワークショップを行って仕様や企画を考えている点も特徴です。また、「子ども食堂」は 現在94か所で運営されており、こども若者生育課が子ども食堂ネットワーク北九州の事務局として、補助金交付、開設・運営の相談、寄附いただいた食材の分配・配送、衛生管理研修会などの支援を行っています。
武田さん:
居場所づくりの支援を持続的かつ効果的に行うには、行政と民間、地域、学校との連携が非常に重要だと考えています。今後も地域全体で子どもたちの多様なニーズに応える居場所づくりを推進し、持続的な支援を目指しています。
放課後NPOアフタースクール 代表理事 平岩国泰
最後に、放課後NPOアフタースクール 代表理事の平岩国泰が登壇し、居場所が必要な背景、放課後の現状や重要性について改めて共有しました。
子どもたち・放課後の課題
子どもたちの状況をデータで見ると、日本は『ユニセフ子どもの幸福度調査』(2025年5月)において、身体健康は1位である一方、精神的幸福度では36か国中34位。また、小中高生の自殺者は年々増加傾向にあり、その背景の一つとして、日本の子どもの自己肯定感の低さが指摘されています。日本財団の『18歳意識調査』(2022年)では、日本の子どもは他国に比べ将来への希望が薄く、自己効力感やチャレンジ意欲も低い傾向が示されています。
また、東京都の調査(2008年)では、自己肯定感は小学校の6年間で下がり、その後も低い水準で推移する傾向が示されています。こうしたデータから、小中高の12年間に様々な課題があることが考えられます。

一方で、放課後の課題を整理すると大きく3点あります。1つ目は、遊べる「時間」「空間」「仲間」という「失われた3つの間」が生じている現状です。データで見ると、昭和と比べて子どもたちが外で遊ぶ時間は半減(*1)し、放課後に友達と遊ぶ頻度が「週1回以下」と答えた小学生は7割以上(*2)になっています。
*1シチズンホールディングズ「『子供の時間間隔』35年の推移」より
*2 放課後NPOアフタースクール独自調査「小学校の放課後の過ごし方」

2つ目は「小1の壁」です。小学校入学後、保護者の仕事と家庭の両立が困難になる社会問題であり、学童保育の不足や質の問題など、放課後の過ごし方が大きく影響しています。
3つ目は「体験格差」です。家庭の経済状況により、子どもの体験格差や習い事の格差が生まれています。その背景に「費用」「情報」「送迎」といったボトルネックがあり、身近に参加できる放課後の居場所、特に学校施設活用によって解決の可能性が広がります。
なぜ放課後が重要なのか?
昨今の教育の方向性として、2023年6月閣議決定された『教育振興基本計画』の中に、「持続可能な社会の創り手の育成」と「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」が2つの柱として掲げられています。一方で、これらを学校だけで達成するのは簡単ではありません。学校で過ごす時間が年間約1200時間であるのに対して、放課後や長期休みの時間は約1600時間にのぼり、両者が力を合わせて取り組むことが重要です。

放課後の良さとしては、自分で過ごし方を決められる主体性や多様性があり、自分らしさの発見や発揮、状況判断や探究する力を育める点があります。学校ではうまくいかない子どもを放課後の居場所が支えられるケースがあることや、企業や地域と協働しやすい点も放課後の利点です。
また、子どもにとっての放課後の価値は今日のキーワードでもある「居場所」。居場所の数と自己肯定感は正の相関関係にあるというデータも示されており、多様な居場所をつくることが課題解決につながるといえます。

学校活用・連携で広がる可能性
学校施設活用の強みとして、安全性や耐震性が確保されていること、新たな建設・設備にかかる費用を抑えられること、多様な子どものニーズに対応できる十分な空間があること、保護者の送迎が不要であること、家庭状況に関係なく参加できることなどが挙げられます。

平岩:
学校施設であれば、メインの居場所に加えて、スポーツ、音楽、ものづくりなど様々な活動ができる居場所づくりも可能です。日々の運営を通じて、自分で選択できる居場所があると、どの子どもも満足そうにしていることを実感します。宿題についても、自分のタイミングで取り組むと満足度が高いように見えます。さらに、子どもたちが居場所づくりに主体的にかかわることで、自分たちの居場所として大切にする意識が育まれます。学校施設は、子どもの選択肢を広げるうえで大きな可能性があり、学校施設を使い切ることは放課後対策の「一丁目一番地」と考えています。
第1部で共有された視点を踏まえ、第2部では「勉強会」パートとして、放課後の学校施設活用に焦点を当てます。自治体の取り組み事例の紹介や、こども家庭庁、文部科学省のご担当者を交えたパネルディスカッションを通じて、居場所づくりにおける課題や可能性を考えていきます。
レポート後編へ
文:ライター/片岡麻衣子