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【子どもの声から始める】評価グリッド法の活用:川崎市子どもの居場所づくりプロジェクト_東高津こども文化センター

行政協働

川崎市では放課後等の子どもの居場所づくりに関する取組の検討を進めています。この取組で大切にしていることは「子どもたちの意見を聞き、取組に反映させること」。本年度はその試行的取組の一環として、川崎市東高津こども文化センターの一室を、実際に利用している子どもたちの意見をもとにリニューアルすることになりました。

東高津こども文化センターは、普段は幼児から高校生までが過ごす賑やかな施設です。リニューアルするのはこの施設の1階の部屋。普段は外部貸し出しが多く、子どもが利用することが殆どないこの一室を、新しい子どもたちの居場所としてリニューアルすることになりました。

子どもたちの声を聴くためにご協力いただいたのは、聖徳大学の白川真裕准教授。白川先生が今回のワークショップで取り入れた「評価グリッド法」は、質問の回答に対して理由を掘り下げて聞いていくことで、表面的な意見だけでなくその奥にある本当のニーズや価値観を引き出すことにトライするインタビュー手法です。

2024年10月30日(水)、小学校5年生~中学生の皆さんに集まっていただき、この手法を用いたワークショップが川崎市東高津こども文化センターにて開催されました。
讃井純一郎・乾正雄(1986). レパートリー・グリッド発展手法による住環境評価構造の抽出―認知心理学に基づく住環境評価に関する研究(1)― 日本建築学会論文報告集, 367, 15-21.

聖徳大学・白川真裕准教授

聖徳大学・白川真裕准教授
聖徳大学心理・福祉学部心理学科准教授。博士(心理学)。専門は環境心理学。さまざまな環境を対象に、環境の持つ特性が人の心理や行動に与える影響に関する研究に従事。主な著書に「シリーズ心理学と仕事17巻 環境心理学」(北大路書房、分担執筆)など。
オフィスやワーケーション先等のワークプレイス、医療施設・公共施設、飲食店、地域といった屋内外の幅広い環境を対象に、アンケート調査や実験とあわせ、評価グリッド法を取り入れた研究を行っている。
「評価グリッド法はもともと環境づくりのための研究で活用することを目的として生み出された手法ですが、日常生活にも役立ちます。例えば旅行の計画を立てるとき、『そこで何をしたい?』『どんな気分になりたい?』と考えることで、より満足度の高い時間を過ごすことができます。自分と周りの人がより気持ちよく毎日を過ごすために役に立つ方法の一つだと思います。」

子どもたちが放課後の居場所に求める真のニーズを発掘する試み

まずは気持ちを温めることからスタート。「いまどんな気分?(静かに過ごしたい、ワイワイしたい)」「どんなことをしたい?」について話してもらい、子どもたちが自然に好きなことや理想の過ごし方を思い浮かべられる気持ちの準備をしました。

ここから、子どもたちが放課後の居場所に求めるものを探っていきます。「普段、放課後に何をして過ごしてる?」と具体的な場面を思い出しやすい質問でイメージを広げていきました。次に、「それはどこで?」「どんな場所?」と実際の場所や場所の特徴をたずねました。子どもたちが自然と自分にとって心地よい環境を考えられることが狙いです。その後、「その場所が好きな理由はある?」「あなたにとって何がよい?」「どんな気分になる?」等、なぜその場所がよいと思ったのか、なぜそのような過ごし方ができるとよいのか、その理由を質問。自分はどんなことが好きで、どんなことを大事にしているんだろう?ということを深堀りするための質問を重ねました。

ここで、一度みんなの意見を共有しました。その後、他の人の意見をきいて思い出したことや言い忘れたこと、もっとこういう風に過ごせたらいいな、こんな場所があったらいいな、という考えを自由に挙げてもらいました。

最後はみんなでワークショップ全体を振り返ってから、今後の計画についての説明をうけ、約1時半のワークショップを終了しました。

子どもたちの意見をビジュアル化したグラフィックレコーディング完成図

今回もグラフィックレコーダーの中尾さんにご協力を依頼。子どもたちのアイデアをすてきなアイデアマップに仕上げてくださいました。

子どもたちから寄せられた追加のアイデア!

こども文化センター内にアイデアマップを貼り出し、参加できなかった皆さんの追加意見も募りました。たくさんのご意見、ありがとうございました!

来春のリニューアルに向けてプロジェクトは続きます

白川先生は「最初は答えに詰まる子も、質問を重ねるうちに『そういう理由で好きだったんだ』と自分で気づき、考えを整理していきます」と語っています。実際にワークショップに参加してくださった皆さんは、とても積極的かつ、主催者側も想像できなかった斬新な意見をたくさん提示してくれました。

現在、それらを基に、本プロジェクトの協働パートナーである乃村工藝社の空間デザイナーたちがリニューアル案を検討しているところです。2025年2月にはお披露目会を実施予定。子どもたちに実際に使ってもらって感想を聞き、さらに改善を行って来春オープンする予定です。その過程は、また本ブログでご報告していきます。

東高津こども文化センター、リニューアル対象ROOM

この部屋を来春に向けてリニューアルしていきます。乞うご期待!

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