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【ご報告(前編)】令和3年度自治体向け放課後研修会『これからの放課後を支える人材と育成~新・放課後子ども総合プランの課題とヒント~』開催

日本財団様の支援を受け、8月4日(水)に全国でよりよい放課後事業を目指す自治体担当者の方へ向けた研修会を開催しました。
放課後NPOアフタースクールは、これまで積み上げてきた放課後現場の運営力やノウハウをいかし、各自治体の実情を踏まえた持続可能な仕組みづくりや運営支援を通して、全国の放課後が子どもたちにとってより一層豊かになっていくことを目指しています。

今回は、多数の自治体とご一緒する中で見えてきた「人材育成」や「学校活用」といった課題に焦点を当て、三部構成で研修を行いました。

第一部:基調講演「大切にしたい放課後の価値」(千葉敬愛短期大学学長・千葉大学名誉教授/明石要一氏)
第二部:人材育成と連携事例(神奈川県鎌倉市・兵庫県南あわじ市)
第三部:講評(文部科学省/岡貴子氏)

▼開催のご案内はこちら
https://npoafterschool.org/archives/news/2021/06/32712/

【研修ダイジェスト】
■第一部:基調講演:「大切にしたい放課後の価値」明石要一氏(千葉敬愛短期大学学長・千葉大学名誉教授 、教育社会学)× 司会 平岩国泰(放課後NPOアフタースクール代表)
「経済格差が体験格差を生む。体験格差が学力格差を生む」

第一部では、既存の教育学の枠組みに留まらないユニークな研究で注目される千葉敬愛短期大学学長・千葉大学名誉教授の明石先生をお迎えし、「大切にしたい放課後の価値」と題し、以下の4点についてご講演いただきました。

1.子どもが変わってきた
2.時代を読み解く
3.放課後のミッションは体験格差を是正すること
4.放課後の指導員に求められる力量は何か

その中で特に印象的だったのが、「体験格差」のお話です。国立青少年教育振興機構の調査から、経済格差が学力格差を生むのではなく、その間に「体験格差」があり、この「体験格差」が学力格差に影響するとのこと。「児童期にいろいろな遊びを体験した人や、自ら遊びを考えた経験、遊びに熱中したという人ほど自尊感情が高く、社会規範を守り、つまずいても立ち上がる可能性が高い。友人も多く、結果として年収も高い傾向にある」という分析結果は、放課後事業に関わる方のみならず、社会的にも興味深い内容だったのではないでしょうか。

さらに、明石先生が行った別の調査では、進学校と教育困難校(生徒の授業態度や学力の低さ、非行などが原因で教育活動が困難な学校)の生徒の差は15歳までの体験格差が関係しており、「ギャングエイジ(子どもの成長過程の一つ。子どもだけの仲間集団の中でルールをつくって遊んだり行動を共にすること)」と呼ばれる小学校3年生~4年生がそのカギを握っているとのこと。この期間にさまざまな体験をすることが重要で「放課後にはこの体験格差を是正する大きなポテンシャルがある」というご意見は、改めて放課後事業の可能性を捉え直す貴重な機会となりました。

「放課後の指導員に求められる力量は何か」
次に放課後指導員に求められる力量について、具体事例を交えながら以下の6点をご紹介くださいました。

上記の中で6)の「能力」と「才能」の違いについて、「学校で教えられる能力=学力であり、才能は教えることができない。安定した社会では状況学習が有効だが、『VUCAの時代』と言われる不安定な社会では試行錯誤が必要。放課後の世界はその練習がたくさんできる」とのお話をいただきました。この姿勢は私たちの現場運営においても、とても大切にしている点です。ついつい、失敗をネガティブにとらえてしまいがちですが、大人は焦らず、子どもたちが挑戦・失敗できる機会をなるべく多くつくることで、それぞれの子が持つ可能性を大切にしていきたいですね。

「居場所の数が増えると自己肯定感も高まる」
明石先生の講演を受けて、代表の平岩からもギャングエイジ期の子どもたちとの関わり方や、居場所の数と自己肯定感の関係性について、お話させていただきました。

「以前、明石先生から伺った中で「学校は知識、放課後は知恵」という言葉があり、いつも胸においている。子どもたちの世界が出来上がっていくのが3・4年生。大人たちがルールを決めるのではなく、なるべく子どもたちに主導権を渡していくのがよいのかなと思います。その時間を経るという意味では、ギャングのように群れて活動する時間も大事だなと思いました。」

「体験格差のお話に関連して、先般「令和3年版 子供・若者白書」を見たのですが、体験活動が非常に重要だと書いてあった。もう一つ大事なデータとして、居場所の数が多い子ほど比例的に自己肯定感、社会貢献欲、挑戦欲、将来への希望、すべてが高くなっている。子どもたちにとって家庭、学校はもちろん、放課後という場所が増えることで、自己肯定感が高まる。そういう意味でも、放課後がぜひあたたかい場所であってほしいと思います。」

「子どもたちにとっての放課後の価値を、どう社会が理解し、フォローアップするか。単に『居場所づくり』ではなく、その基本に『ともに遊び楽しめる』『親や先生と違う、話せる大人の存在』『斜めの関係の再構成』といったコンセプトがあっていいことを、改めて感じました。ありがとうございました。」(自治体・放課後児童クラブ・管轄部署)

「基調講演では具体的に支援員に求められていることが紹介され、すぐに実践したいことが沢山ありました。ありがとうございました。」(放課後運営事業(学童)関係者)

「『経済格差→体験格差→学力格差』が今後の施策提案の上で肝になると感じ、ベースとなる考え方を講演していただき大変ありがたかったです。」(市区町村 公営塾スタッフ)

最後に、明石先生から放課後事業に関わる皆さんに向けてメッセージをいただきました。

「経済格差が学力格差を生むという点は社会的にも非常に困っている。その格差を是正できるのが放課後であり、これ以上格差を広げてはいけない。このミッションを行政の方も含めて取り組んでいくことが、明日の日本を元気にする。明日の日本を元気にするのは今の子どもたちなんですよ、ということを頭に入れておいていただくと助かります。がんばっていきましょう、みなさん!」

勇気づけられる力強いメッセージですね。体験格差を埋める時間として、社会全体で放課後の活用を進め、そしてそれが全ての子どもたちに開かれていくことが重要だなと思います。

※後編につづく

文・事業開発チーム/入山

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